快適な室温を保つことは、過ごしやすい住環境を実現するために重要です。しかし、断熱が十分おこなわれていない住宅で冷暖房を使用しても、効率が悪いばかりかコスト面や環境面でもよくありません。
 
建物の断熱性を大きく左右しているのは、窓などの開口部です。今回は、窓に断熱対策をする重要性や効果的な方法などをご紹介します。

窓の断熱が重要な理由

窓の断熱 重要 理由
 
通常の窓ガラスは、あまり断熱性能の高い建材ではありません。住宅のなかでも、もっとも外気の影響を受ける部分が窓です。
 
住宅全体の断熱性に大きく影響する窓の重要性を詳しく解説します。
 

快適な住環境に欠かせない断熱

住宅における断熱とは、建物の内外を仕切っている素材の熱伝導率を下げ、熱の移動を防ぐことです。断熱性能の高い建材を取り入れることで、外気の熱を伝わりにくくして「夏は涼しく、冬は暖かい」状態を実現します。
 
快適に過ごせる室温を維持するためには断熱が不可欠です。断熱が不十分だと、冷暖房効率もあがらず、温度変化が激しく過ごしにくい住宅になってしまいます。

住宅のなかで窓がもっとも外気の影響を受ける

住宅のなか 窓 外気の影響を受ける
住宅のなかでは窓がもっとも外気の影響を受けます。住宅に使用される建材では、窓のガラス部分が開口部も広く一番薄いからです。
 
実際に、冬は窓から室内にある暖気の58%が流出し、夏は室内に侵入する熱の73%が窓からはいってきているというデータもあります。住宅のほかの部分では、熱の流入割合が屋根は5〜11%、換気扇や外壁は6〜15%、床は3〜7%程度です。
 
つまり、窓の断熱性を高めると、住宅全体の断熱性が高まります。

断熱によって光熱費を節約できる

しっかりと断熱された住宅は、快適に過ごせることはもちろん、光熱費の節約にもつながります。室温が外気の影響を受けにくく、最低限の冷暖房で快適な温度にできるためです。また、一度最適な温度になれば長時間室温をキープできます。
 
家庭で消費されるエネルギーの27.5%は、冷暖房が占めているというデータもあります。冷暖房の使用を抑えることは、光熱費の節約に直結するのです。
 
【関連記事】住宅にとって重要な断熱とは? メリットや遮熱との違いについても詳しく解説

断熱シートを手軽に活用する

断熱シート 手軽 活用
窓の断熱効果をあげる方法としてもっとも簡単なのが、断熱シートの活用です。窓に貼りつけるだけなので、DIYで施工できます。
断熱シートの効果やメリットについて詳しくご紹介します。

窓に使用する断熱シートとは

窓に貼り付けて使用する断熱シートには、さまざまな種類があります。素材や厚みによって断熱効果が異なるため、目的にあわせて選びましょう。
 
断熱シートはできるだけ厚いほうが高い断熱性を発揮します。また、お部屋の雰囲気を変えないためには、透明の断熱シートがおすすめです。ただし、透明な断熱シートは光を遮らないため夏場の強い日光の影響を受けやすくなります。
 
断熱シートの施工は、基本的に窓に貼りつけるだけですが、貼り付け方法は断熱シートによって異なります。シートがシール状になっているものであれば施工は簡単です。ただし、シール面に使用される接着剤によっては、はがした際に跡が残るものもあるので注意が必要です。水で貼りつけるタイプであれば何度も貼り直すことができ、跡もほとんど残りません。

断熱シートを使用するメリット

断熱シートには断熱以外にもさまざまなメリットがあります。
まず、断熱シートを貼ると万が一ガラスが割れた際に飛散しにくくなります。台風が接近しても窓ガラスにテープを貼る必要はありません。また、色やのぞき見防止機能のついた断熱シートであれば外から室内をのぞかれる心配が軽減されます。断熱シートを選ぶ際は、そのほかの機能もあわせて検討しましょう。
 

断熱シートの効果は限定的

断熱シートを貼ると一定の断熱効果は期待できますが、冷暖房が必要ないほどの高い効果は得られません。高い断熱効果を得るためには、外気との境界線に空気層が必要です。しかし、断熱シートは窓に密着するため、ほとんど空気層はありません。シートの厚み分、熱が伝わりにくくなるだけです。
 
しかし、施工が容易であることや費用の安さを考えると、手軽に断熱をしたい場合は断熱シートも選択肢になります。まずは断熱シートを貼ってみて、不十分と感じたら別の断熱対策を検討しましょう。

断熱ボードやプラダンを使用する

断熱シート以外の手軽な断熱アイテムとして、断熱ボードやプラダンがあります。
断熱ボードは熱の遮断を目的に開発された建材です。また、窓専用に開発されたものもあります。
プラダンは、ポリプロピレン樹脂を原料としたプラスチック製の段ボールです。空気を含む段ボール構造のため、断熱ボード同様にすぐれた断熱効果が見込めます。
 
いずれも、ホームセンターやインターネットなどで入手可能です。どちらも設置は簡単で、テープなどで窓枠に固定するだけです。断熱ボードを使用する場合は、窓に立てかけるだけでも問題ありません。
 
一方で、プラダンや断熱ボードを窓に使用すると、部屋の雰囲気を大きく変えてしまいます。特にリビングなどに使用すると、部屋が閉塞的になってしまうので注意しましょう。
 
【関連記事】断熱カーテンなら1年中快適に過ごせる?! メリットや 遮熱・防寒カーテンとの違いを解説

断熱窓で本格的な断熱対策

断熱窓 本格的 断熱対策
より高い断熱効果を得たい場合は、窓そのものを断熱窓に変えることをおすすめします。窓を変更するのでお部屋のインテリアにも影響しません。
 
方法は複数ありますが、それぞれ施工のしやすさや断熱効果が異なるので、予算や目的にあわせて最適な方法を選びましょう。

手軽な方法は断熱ガラスに交換すること

窓ガラスのみの交換であれば、比較的簡単に本格的な断熱効果を得られます。断熱ガラスは、断熱効果の高い「Low-E膜」という素材でコーティングされたガラスです。
 
窓枠やサッシをそのまま利用してガラスのみを交換するため、コストを抑えられるほか、施工期間も長くかかりません。
 
ただし、複層ガラスや二重窓と比べて断熱効果は低くなっています。

複層ガラスも断熱には有効

複層ガラスは、複数のガラスを張り合わせた窓用の建材です。2枚重ねや3枚重ねのものがあり、重ね合わせたガラスが多いほど高い断熱効果をのぞめます。
 
デメリットは、ガラスが厚くなる点です。窓枠やサッシを交換する必要があるうえ、重量も増加します。

もっとも効果的なのは二重窓

窓の断熱対策として、もっとも高い効果を見込めるのが二重窓です。内窓・二重サッシ・インナーサッシとも呼ばれます。通常は、今ある窓の内側に新たな窓枠を設置するため、リフォーム工事が必要です。
 
二重窓は、断熱効果以外に防音や防犯も期待できます。ただし、内側に窓を設置するため部屋が少し狭くなる点と、工事費用が高額になりやすい点がデメリットです。

意外な盲点は窓サッシの断熱性能

実は、窓サッシも外気の影響を大きく受けています。窓サッシの交換も断熱対策の一つです。
 
アルミ製の窓サッシは、熱伝導率が高いため外気の影響を直接受けてしまいます。少しでも断熱効果を高めたい場合は、窓サッシを熱伝導率の低い樹脂や木製のものに変更することを検討しましょう。

窓の断熱はお部屋や予算にあった方法を選ぶ

住宅内外の熱の移動は、多くが窓を介しておこなわれます。冷暖房効率をあげて快適な室温を保つために、窓の断熱対策を講じましょう。窓の断熱対策には、さまざまな方法があります。期待する断熱効果だけではなく、部屋のインテリアや予算にあわせて最適な対策を選ぶことが大切です。
 
窓1枚あたりの費用相場は、DIYで簡単に設置できる断熱シートやフィルムは1,000〜4,000円前後で入手できます。プラダンは3,000〜5,000円前後で、建材の断熱ボードを流用する場合は1,000〜3,000円ほどです。
 
ガラスや二重窓など本格的な断熱は費用が大きくなります。断熱ガラスへの交換で3〜15万円、二重窓を設置すると6〜25万円ほど必要です。
 
また、窓の断熱対策をおこなうと、防音や防犯、ガラスの飛散防止など断熱以外のメリットも得られます。まずは手軽な断熱シートからでも、窓の断熱対策を試してみてください。