マンションと一戸建て、マイホームとして最適なのはどちらでしょうか。最適な物件を判断するには、ただ物件情報を眺めていても結論は出ません。
 
マンションと一戸建てはどうすれば選べるのか、そもそもどんな点が違うのかを、メリットやデメリットも含めて解説します。どちらを選んでも一生の買い物になる可能性が高い重要な決断。後悔しないためにも、この記事を参考にじっくりと検討してください。

マンションと一戸建てのどちらかに優劣はつけられない

マンションと一戸建てのどちらかに優劣はつけられない
マンションと一戸建てに優劣はありません。重要なのは、それぞれの違いを把握して、理想とする暮らしのイメージに当てはめて判断することです。
 
 

マンションと一戸建ての違いを把握する

マンションと一戸建ては、それぞれ特徴が異なります。どちらがすぐれているかは一概にはいえず、まずは違いを把握することが大切です。
 
たとえば、手軽さや利便性を求めるのであればマンションのほうが向いています。一方で、自分らしく自由な住環境の構築を望む方には一戸建てがおすすめです。
 
マンションと一戸建ての違いを1つずつ洗い出して比較することで、生涯をともにする住まいは、どちらがふさわしいかが見えてきます。

具体的に暮らしをイメージする

マンションと一戸建てのどちらにするかを選ぶ際は、今の状況と将来目指すライフスタイルを整理して明確にしておきましょう。まずは、どういう暮らしをしたいのかが定まっていないと、どちらが適しているかの判断ができません。
 
家族構成や家での過ごし方、将来どのように暮らしたいかを、できるだけ具体的にイメージしておきます。また、せっかくの新生活なので、今の家で不便に感じている点も洗い出しておきましょう。
 
家族がいる場合は、みんなで話し合って生活の理想像を作りあげていくことも重要です。たとえば「大家族なので、みんなで伸び伸び暮らしたい」「子どもが独立するので、今後は夫婦二人でコンパクトに暮らしたい」などです。
 
家族の1日の過ごし方を、マンションと一戸建てに住んだときに当てはめながらイメージすると、どちらが適しているかが明確になります。
 
【関連記事】住宅購入の流れや購入から入居までの期間は? 失敗しないための注意点も解説
 

マンションと一戸建てを比較するポイント

マンションと一戸建てを比較するポイント
マンションと一戸建ての違いを把握するには、住まい選びで重要な項目をそれぞれ比較することが大切です。項目ごとに比べてみると、漠然と思い浮かべていたときよりも具体的にイメージできるようになります。
 
物件を選ぶ際に検討すべき8つのポイントを、マンションと一戸建てを比較する形でご紹介します。どちらが自分の生活にあっているかをわかりやすくするために、一覧表を作成してチェックしていくのもいいかもしれません。
 
 
 

物件価格と購入までの流れ

マンションと一戸建てでは、物件価格と購入時に必要な費用等が異なります。物件価格そのものの高低は、どちらも立地や広さで変わってきますが、必要になる費用項目がそれぞれ違うので注意が必要です。

マンション

マンションを購入する際は、物件価格以外に3〜5%の諸費用がかかります。たとえば、物件価格が4,000万円の場合は、120万〜200万円の追加資金も準備しておきましょう。とくに新築マンションの場合は、諸費用のなかに管理組合を発足させる際に必要な「管理一時金」や、建物の大規模修繕に使われる「修繕積立一時金」といった中古マンションにはない費用が含まれることもあります。
 
また、新築マンションで契約から入居までにかかる期間は建物完成時期により変動しますが、特に住宅ローンを利用する場合は引き渡しの半年前くらいに手続きを開始するのがよいでしょう。マンション購入時の大まかな流れは以下の通りです。竣工前の新築マンションであれば、希望すれば間取りの変更やオプションの工事が可能な場合もあります。
 
・資金計画を立てる
・物件情報の収集
・物件見学
・住宅ローンの事前審査
・購入申し込み
・重要事項説明と売買契約
・住宅ローンの本審査
・内覧会
・残金決済後引き渡し

一戸建て

新築の一戸建てを購入する際には、別途「水道分担金」がかかる場合があります。これは水道の新規加入代や水道管の引き込み工事代など、マンション購入時にはかからない費用です。金額は、自治体や水道メーターの口径によって大きく異なりますが15万から30万円程度が相場となっています。
 
一戸建ての場合には、物件価格に加えて5〜10%の諸費用を見積もっておくのがいいでしょう。ただし、水道分担金は物件価格に含まれているケースもあるため、事前に確認してください。
 
一戸建てに入居するまでの期間は、注文住宅の場合は半年〜8ヶ月程度です。完成物件の場合は最短1ヶ月ほどで入居できることもあります。
 
一戸建て住宅に入居するまでのおもな流れは以下の通りです。物件探し以外に、施工会社選びや設計といったマンション購入にはない項目もあります。
 
・予算を決める
・土地を探す
・設計施工会社を探す
・住宅ローンの選定
・土地の売買契約
・家の設計
・建設工事請負契約、建築確認申請
・住宅ローン契約
・施工(着工〜竣工)
・引き渡し

維持費用と税金

マイホームを持つと、維持費や税金の支払いも必要となります。マンションと一戸建てでは、かかる費用や項目が異なるので事前に確認しておきましょう。

マンション

管理費や修繕積立金はマンションならではの維持費用です。月々の支払いは発生しますが、建物の維持や保守点検、日常的な共用部の清掃などを管理会社に任せられるメリットがあります。
 
また、維持費とは異なりますが、共用施設の利用が有料となる場合もあります。さらに、駐車場やトランクルームなどの利用料が毎月発生するので注意が必要です。
 
マンションを取得したあとに継続的にかかってくる税金には、固定資産税と都市計画税があります。固定資産税については区分所有建物面積も含まれるので一戸建てより高くなります。

一戸建て

一戸建ての場合、マンションと違って定期的な修繕積立金や管理費用はかかりません。しかし、リフォームや修繕費用などはすべて自己負担となるため、別途確保しておく必要があります。
 
屋根や外壁、隣家との塀といった、マンションであれば共用部にあたる部分の修繕費もすべて負担する必要があります。
 
税金面では、固定資産税がマンションほど高額にはなりません。一戸建てでは、土地全体が課税対象となります。ただし、建物については一戸建てのほうが減価償却の早い分有利といえ、土地に対しても特例が適用されることがあります。

資産価値

マンションと一戸建ては、どちらも不動産という資産です。しかし、将来の資産価値についてはそれぞれに違いがあります。マンションと一戸建てを比較する際は、資産形成の観点で検討することも大切です。

マンション

マンションの資産価値は、一戸建てに比べて緩やかに下がります。
 
マンションの構造は鉄筋コンクリート造が一般的で、法定耐用年数が47年と設定されています。新築時から長期間にわたって価値が維持されやすい資産です。実際、維持管理の状態が良ければ、築40年以上のマンションが中古にて販売されるケースも珍しくありません。
 
しかし、例えば住宅の供給戸数が過剰なエリアなどでは販売が難しくなり、耐用年数内であっても価格が大きく下がるおそれもあります。マンションを購入する際は、立地や地域人口の増減といった将来性も検討することが大切です。

一戸建て

一戸建てでは、建物自体はあまり資産にはなりません。国が定める建物の法定耐用年数では、一戸建ての耐用年数は22年とマンションより短く、ゼロになってしまうこともあります。
 
一方、土地の価格は比較的安定しています。建物の価値が失われても土地があることで、全体の資産価値としては一定期間が経過すると下落しにくくなります。立地条件や経済状況によってはむしろ高騰するため、マンションよりも一戸建てのほうが高く売却できるケースもあります。

広さや間取り

毎日を快適に過ごすために、広さや間取りはマイホーム購入において大切なポイントです。単純な広さだけでみると一戸建てのほうが広いですが、逆に不便を感じる人もいるので、どちらがいいとは一概にはいえません。

マンション

マンションには、一戸建てのような開放感のある広さがないことが多いです。しかし、実際に生活するとなると、普段使う部屋や動線は限られてくるので、必要なスペースを効率よく使うことができます。
 
また、限られた広さのなかで生活の利便性を高めるために、マンションの間取りにはさまざまな工夫が施されています。収納場所がたっぷりと確保されているなど、見た目の広さ以上にゆったりと生活できる物件も少なくありません。

さらに、数は限られますが、100㎡超という面積の大きい物件もあります。

一戸建て

一戸建てのメリットは、生活に使えるスペースの広さです。多くの物件で100以上の面積があり、60〜70が平均的なサイズといわれるマンションよりもゆとりがあります。
 
また、建物からすぐにアクセスできる専用のガレージや庭があることも、マンションにはなかなかない魅力の1つです。庭の植栽やガレージでの作業など生活動線に直接かかわらない余白によって、豊かな生活が手にはいります。
 
一方で、広い分だけ維持と管理に手間のかかる点が一戸建てのデメリットです。

風通しや日当たりなどの住環境

風通しや日当たりといった住環境も、一生を過ごすかもしれないマイホーム選びには大切な要素です。マンションでも一戸建てでも一定の住環境は確保されていますが、それぞれ特徴が異なります。
 

マンション

マンションは、日当たりや風通しをある程度考慮して設計されています。多くの物件で日中に光が差し込むようになっており、日がまったく当たらないケースは稀です。
 
しかし、物件の多くは両隣りに住戸があるため、窓は2面しかありません。1箇所はそれなりに日が差すように建築されていますが、一戸建てと比べると採光できる場所は限られてしまうでしょう。また、立地によっては、低層階の日当たりや風通しが悪いこともあります。さらに、隣接する土地に大きな建築物ができるなど、あとから住環境が悪化するおそれもあるので、周辺環境の確認が重要です。
 
住環境という点では、騒音も生活に大きく影響します。分譲マンションでは、住人の入れ替わりが比較的少ないので、騒音被害が大きなトラブルに発展するかもしれません。また、自身が受ける騒音被害も問題ですが、隣室や下の階への騒音で迷惑をかけないように生活することもストレスがかかります。

一戸建て

一戸建てはどの方向にも窓を設置できるため、風通しや日当たりよく設計できる点が大きなメリットです。一方で、隣接する建物の影響をマンション以上に受けてしまうという弱点もあります。
 
建物の高さがあまりなく、隣家との距離が近い場合、思いのほか日が当たらないことも多いため注意が必要です。
 
深夜の洗濯や掃除、ステレオの音量といった生活音については、隣家と距離のある一戸建てであれば、マンションほど気をつかう必要はありません。音が聞こえにくいためプライバシーを確保でき、自由なライフスタイルを送りやすいことは、一戸建てならではのメリットです。ただし、あまりに大きな騒音はトラブルに発展するおそれもあるので、節度を守って生活しましょう。
 
 

災害やセキュリティ面

防災や防犯面もしっかりと確認しておきたいポイントです。建物が頑丈で、防災設備もすぐれているマンションのほうが非常時には安心です。ただし、隣室の様子がわかりにくく、死角も発生しやすいので、近隣との連携が取りにくいこともあります。

マンション

マンションは耐久性が高く、防災面ですぐれている住宅です。さらに、近年の新築マンションは防災設備が充実しており、耐震構造の採用や備蓄倉庫の整備、なかには自家発電装置を設置している物件もあります。
 
防犯面では、弱点だった死角への対策として各所に防犯カメラを設置するマンションが増加しています。
 
防災性や防犯性がもともと高かったマンションは、最新の設備によって、より安全性の高い住宅に進化。いつも安心して生活できます。
 
【関連記事】マンションのセキュリティ対策には何がある? 防犯性の高いマンション選びのポイント

一戸建て

一戸建ての防災面と防犯面はマンションに及ばない部分もあります。ただし、近年の戸建住宅の耐震性や風水害への耐久性は高まっているため、過度の心配はいりません。

防犯面については、防犯灯やカメラの設置を必要に応じておこないましょう。さらに、一戸建ての防犯対策として有効なのが、近隣住人とのコミュニケーションです。日ごろからいい関係を築き、相互に気にかけることで、人の目が多くなり空き巣などの被害を未然に防げる可能性が高まります。
 
また、地域住民でつくるコミュニティは、災害時には心強い存在です。お互いに助けあうことで、物理的な援助はもちろん、精神的にも大きな支えとなるでしょう。

リフォームや増改築

家族構成やライフスタイルの変化に合わせて、リフォームや増改築が必要になることもあります。

マンション

マンションは増築ができないほか、リフォームできる箇所も限られています。共用部はもちろん、専有部であっても構造上の制限によって自由にリフォームができないこともあるため注意が必要です。また、玄関ドアやバルコニーは専有部分と思われやすいですが、実は共有部分なので基本的にリフォームはできません。
 
ただし、構造物以外の壁などは比較的自由に設計が可能です。アイディア次第では、大幅なリフォームができるでしょう。

一戸建て

リフォームや増改築をある程度制約なくできる点は、一戸建てならではの魅力です。家族構成の変化だけではなく、趣味の部屋や建物を減らして庭部分を増やすなど、自由に設計できます。
 
また、ソーラーパネルや家庭用蓄電池など、新しいインフラ設備を取り入れることも可能です。技術は常に進歩しているので、よりエネルギー効率の高いものに随時アップデートできます。

暮らし全般の利便性

暮らし全般の利便性の判断は、生活のなかで何を重視するかによって変わってきます。どんな暮らしを望んでいるのかを、家族とも相談して明確にしていきましょう。

マンション

マンションの多くは、比較的利便性の高い場所に建てられています。駅やスーパー、学校といった日常生活に根ざした周辺施設へ手軽にアクセスできる点がメリットです。
 
また、マンション内での生活の利便性も高いといえます。マンション専用のゴミ集積場が設置されている物件も多く、遠く離れた場所までゴミを捨てにいく手間がかかりません。さらに、シアタールームやジムなど、生活を豊かにしてくれる共用施設を備えた物件も数多くあります。
 
一方で、タワーマンションをはじめとする規模の大きい物件に住むとエレベーターの混雑やマンション敷地内の移動に、思いのほか時間がかかってしまうおそれがあり、外出がめんどうに感じることがあるので注意が必要です。

一戸建て

一戸建ては、多くの物件が駅のある市街地からやや離れた立地に建てられます。マンションのように「駅まで徒歩3分」といった好立地の物件はほとんどありません。
 
しかし、同じ「徒歩10分」でも、マンションの場合と一戸建ての場合では物件としての評価が異なります。駅から徒歩10分のマンションはやや評価が下がりますが、一戸建てであれば駅徒歩圏内物件として高く評価されることもあります。
 
地域によっては、家から離れた場所にゴミの集積場が設置されているなど、マンションほどコンパクトで利便性はよくありません。
 
一方で、学校やスーパーといった周辺地域の建設も含めて一戸建て住宅の分譲地を開発するケースも増えているため、しっかりと物件選びをおこなえば、日常生活に困ることはないでしょう。

マンションと一戸建ては暮らしに求めるイメージから選ぶ

マンションと一戸建ては暮らしに求めるイメージから選ぶ
ここまでご紹介したように、マンションと一戸建てはそれぞれ特徴が異なります。重視するポイントを決めずに物件を見ていると、どちらがいいのかわからなくなってしまいます。
 
迷った際は、細かい条件を見比べるのではなく、生活に求めるイメージをふくらませてみましょう。どんな生活リズムなのか、休日はどう過ごしたいのか、実現したい暮らしの全体像を家族とも相談しながら丁寧につかんでいくことが重要です。
 
ここでは、マンションと一戸建てそれぞれの特徴に応じた、暮らしのイメージをご紹介します。ただし、価値観は人それぞれなので、一概にすべての方に当てはまるとはいえません。紹介する内容は参考程度にとどめ、自分の求めるイメージと照らし合わせてみてください。

安心して上質な暮らしを求められるマンション

時間的なゆとりや豊かさを重視する方には、マンションがおすすめです。立地の良さによる日常生活の利便性や、セキュリティの高さによる安心感を得られ、生活にかかる手間や負担を軽減できます。
 
生活動線が整理された快適な間取りや、充実した共用設備は、上質で洗練された暮らしにつながります。通勤や通学、日々の買い物にかかる時間を減らして、趣味や自分磨きに集中できるなど、生活の効率を高められるでしょう。
 

街と人に寄り添って自由に暮らしを作りあげる一戸建て

一戸建てでの生活は、マンションほど効率がいいわけではありません。しかし、理想の暮らしを自由に作りあげる魅力があります。また、一戸建ての一つひとつが街を形成する要素であり、そのなかで生活する人とふれあう経験は、効率に代えがたい貴重なものです。
 
街と人に支えられた落ち着いた住環境があるからこそ、新しいものも自由に採り入れられます。近隣住人への配慮は必要ですが、生活音にそれほど気をつかうこともありません。
 
一戸建てであれば、ライフスタイルの変化や家族の成長とともに、家も成長させていきながら末長く自分らしい暮らしを実現できます。
 

マンションと一戸建てを選ぶ際は慎重に検討する

 
物件紹介のパンフレットやウェブサイトを見ると、マンションも一戸建ても魅力的に感じるものです。しかし、印象だけで判断すると、実際に生活を始めてから後悔することにもなりかねません。
 
今の生活や将来の変化をふまえて、できるだけ具体的に暮らしをイメージしながら検討することが大切です。
 
また、マンションと一戸建てに優劣はありません。今回ご紹介したポイントごとに、どう違うのかを丁寧に比較していくと、どちらがより自分の理想に近いのかが見えてくるはずです。
 
生活を大きく変えるマイホーム選び。後悔しないためにも、納得のいくまで家族と相談しながら最適な選択をしてください。