事務所の維持コストを抑えたい、使い勝手のいい空間を作りやすいなどの理由から、
自宅を含めた分譲マンションの利用を検討する企業も存在します。
しかし、分譲マンションの事務所利用は可能なのでしょうか。
自己所有の分譲マンションでも、原則として自由に事務所利用できるわけではありません。
管理規約をよく確認し、事務所利用ができるかどうか事前に確認しましょう。

事務所利用 オフィス
事務所利用の一環として、分譲マンションの一室を活用できないか検討する企業もあります。
フリーランスの働き方が一般化したのを受け、極力コストのかからない事務所作りを目指す企業は少なくありません。
この記事では、分譲マンションの事務所利用の是非や、事務所利用するときに確認するポイント、事務所利用できない場合の代案についてわかりやすく紹介します。
 

分譲マンションは事務所として利用できる?


分譲マンションは事務所として利用できるのでしょうか。もし自己所有や会社所有の分譲マンションを事務所として利用すれば、「保有資産を有効活用できる」「内装や設備をカスタマイズし、働きやすい環境を実現できる」といったメリットがあります。
法律上、分譲マンションの一室を事務所として「登記」すること自体は問題ありません。しかし、実際は分譲マンションであっても、区分所有者が自由に事務所として利用できないようになっています。
 
分譲マンションの事務所利用の障壁となるのが、マンション管理組合の定める管理規約や使用細則です。分譲マンションの管理規約は、ほとんどの場合、国土交通省が策定した「マンション標準管理規約」に基づいています。
マンション標準管理規約第12条には以下のような文言があります。
 
“区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。”
【引用】国土交通省:マンション標準管理規約(単棟型)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001417732.pdf P.3
 
もし管理規約に「専ら住宅として使用する」「事務所利用不可」といった記述がある場合、分譲マンションの一室を事務所として利用することはできません。
 

分譲マンションを事務所として利用する場合は管理規約の確認を!

資料 事務所 オフィス

分譲マンションを事務所利用する場合は、必ずマンション管理組合の管理規約を確認しましょう。
マンションの事務所利用について争った判例では、管理規約で事務所利用が禁止されている場合、区分所有法57条の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に該当するなどの理由から事務所利用者側が敗訴しています。
マンション管理組合とのトラブルにならないよう、事務所利用に該当するケースや、事務所利用が禁止されている理由について確認しておきましょう。
 

事務所利用がOKな場合とNGな場合


事務所利用がOKな場合として、次のようなケースが挙げられます。
  • ●管理規約において、居住部分の使用用途に事務所などが含まれている
  • ●そもそも住居契約ではなく、事務所契約を締結している
  • ●管理規約で事務所利用が禁止されているが、管理組合と交渉して許可をもらった
 
事務所利用がNGな場合、以下のような不特定多数の人が出入りする使用用途は認められない可能性があります。
 
  • ●税理士事務所や弁護士事務所として利用する
  • ●英語教室や手芸教室を開き、生徒を募集する
  • ●ネイルやエステなどの施術を行うサロンを開業する
  • ●フリーランスとしてオフィスワークをする
 
とくに判断が難しいのが、フリーランスとして分譲マンションの一室でオフィスワークをするケースです。
住人以外の来客のある事務所・教室や、施術中の音が近隣に響く可能性のあるサロン経営などと違い、
フリーランスとしてオフィスワークをする場合は、区分所有法57条の「区分所有者の共同の利益に反する行為」には該当しないように見えます。
しかし、フリーランスの事務所利用を認めれば居住者の間で不公平感が生まれ、徐々に管理規約のルールが機能しなくなる可能性があります。
そのため、フリーランスとしてオフィスワークをする場合も、事前に管理組合に「マンションの一室をオフィス利用できないか」「事務所として登記してもよいか」を確認することが大切です。
 

事務所利用が禁止される3つの理由


そもそも、なぜ管理組合は分譲マンションの事務所利用を禁止するのでしょうか。前項で説明した通り、過去の判例では、マンションの事務所利用が区分所有法57条の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に該当するとしています。
具体的には、管理組合が事務所利用を禁止する理由として、下記の3つが挙げられます。
  1. 1.住人以外の人や協力会社の人などが訪問するなど、人の出入りが激しくなり、防犯性能やセキュリティが低下する
  2. 2.来客駐車場が埋まり、住人の家族や友人などが利用できなくなる
  3. 3.事務所内の騒音が上下階や隣の部屋に響き、トラブルに発展する
 
管理組合は他の居住者の暮らしの安全・安心を守る必要があります。そのため、マンションの利用目的を住宅としての使用に限定し、事務所利用を認めないケースが多くなっています。
 

管理規約を変更することはできる?


しかし、管理規約に「専ら住宅として使用する」「事務所利用不可」という記述があっても、管理組合と双方話し合いの上で管理規約の変更を交渉し、規約が変更できれば、その物件を事務所に利用できます。
ただし、区分所有法第31条には次のような規定があります。
 
“規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によってする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。”
【引用】e-Gov 法令検索:建物の区分所有等に関する法律
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000069
 
つまり、管理規約の変更には「住人の四分の三以上の賛成」「利害関係にある住人の承諾」という2つの条件が必要です。もしも管理規約の変更が難しい場合は、管理組合が事務所利用を禁止する事情を踏まえながら、例外として事務所利用が認められないか交渉してみましょう。
 
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分譲マンションを事務所利用できない場合は?


もし分譲マンションを事務所利用できない場合、次の2つの対策をとることができます。
  • ●レンタルオフィスやコワーキングスペースを利用する
  • ●事務所として利用できる賃貸物件を探す
 
レンタルオフィスやコワーキングスペースなら、契約後即利用することが可能です。24時間365日利用可能なオフィスや、駅周辺エリアのオフィスも多いため、利便性も優れています。
また、住宅以外の利用が可能な賃貸物件を探し、オフィス、サロン、事務所として一時的に契約する方法もあります。

分譲マンションを事務所利用する場合は、必ず管理規約の確認を!


現状、近隣トラブルを防止するため、分譲マンションの事務所利用やオフィス利用を原則認めない管理組合がほとんどです。
管理規約を変更できないか交渉することも可能ですが、分譲マンションを事務所利用できない場合に備えて、
「レンタルオフィスの利用」「事務所利用可能な賃貸物件を探す」といった代替案も検討しましょう。