マンション選びというと価格や設備に注目しがちですが、地域のコミュニティも重要な要素です。 地域の行事や近所づきあいだけでなく、防災の観点からもコミュニティの価値が見直されています。とくに近年はマンション単位でコミュニティ活動を活発に行い、防犯・防災の取り組み強化につなげているケースが多く見られます。
そこで今回は「地域コミュニティ」と防犯・防災に加えて感染症対策という視点で、元不動産営業マンがマンション選びでチェックしたいポイントについてお話します。最新の不動産会社の取り組みも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
地域コミュニティについて
皆さんが居住している各地域には「子ども会」や「老人会」など様々な団体があると思いますが、コミュニティの中心となるのは「自治会(町内会)」です。マンションの居住者は地域の自治会に所属するケースが一般的ですが、マンション独自に自治会を立ち上げるケースもあります。自治会の運営資金は、所属している方の会費や補助金・寄付などです。地域の交流だけでなく清掃や情報共有・行政への要請など、活動範囲は多岐に渡ります。実際に自治会の要請によって、道路の舗装や標識の整備などが行われたケースはたくさんあります。
「引っ越したら当然に地域の自治会に所属する」と認識している方は多いですが、自治会への加入は任意です。しかし、マンションの全居住者が自治会に加入しているケースは多くあり、マンションを新たに建設する際、事業者と地域の自治体との約束により居住者が約束することを取り決めていた場合もありました。
実際にマンションの「売買契約に関する重要事項説明書」や管理規約に「自治会への加入する」と記載されていることは多いです。しかし「自治体への加入は任意である」との原則から、近年はご自身で選択できる形式になっているケースが増えています。
大型のマンションでは地域の自治会に参加せずに1つのマンションのみで自治会を形成するケースがありますが、その場合でもあくまで居住者の加入は任意です。
多くの方が夏祭りなど、地域のイベントに参加された経験があると思います。地域の行事は市町村や自治会のほか、神社・仏閣が主催しています。特に子どもがいるご家庭などは、行事が活発に行われている地域に住むことは魅力的な選択肢となるでしょう。
大型物件の場合は、マンション内で行事が開催されるケースがあります。大規模な予算をかけたりイベント会社が企画に入ったりしていて、本格的な行事が開かれているマンションは多いです。マンションを検討しているときには興味がなくても「実際に行事に参加してみたら楽しかった」というお話を聞くこともあります。
検討しているマンションの地域が「どのぐらいコミュニティ活動に積極的か」は、中古物件であれば管理員さんに聞いてみるとよく分かります。新築の場合や管理員さんに聞きに行くのはハードルが高いと感じる方は、営業担当者に聞いてみましょう。
マンション防災について
東日本大震災以降、日本人の防災意識は高まっています。そのため、マンション全体として防災に取り組んでいる管理組合・自治会が増えています。実は、コミュニティ活動が活発なマンションは防災にも力を入れていることが多いです。災害時の円滑な活動には、居住者間でのコミュニケーションが欠かせません。中古のマンションであれば、防災への取り組みは管理員さんに確認するとわかることが多いです。内見の際は営業担当者に相談して、管理員さんに話を聞けるか確認してみましょう。新築の場合は、ご自身も参加される管理組合活動の中で、防災への取り組みを進めていくことになります。
マンションの災害リスクは、立地する地域の地盤や近隣の河川などに影響される要素が大きいです。市区町村の役所でハザードマップ・防災パンフレットを入手して、購入を検討しているエリアの災害リスクと防災対策を確認しましょう。近年は多くの市区町村で、役所に行かなくてもHPで資料をダウンロードできます。マンションを購入する際は、居住するエリアの災害リスクを把握することが重要です。
中古の物件を購入する場合は、マンション独自の防災マニュアルを策定しているか確認しましょう。マニュアルを作成する過程で、管理組合に防災に関するノウハウが蓄積しています。併せて防災備品の有無を確認することも大切です。近年は水や食料だけでなく、災害用トイレや発電機などを備蓄しているマンションが増えています。
内見の際に建物内を見る機会があれば、AEDの場所なども確認しておきましょう。エレベーター内に「閉じ込め対策用の非常用BOX」を設置しているマンションもあります。
さらに踏み込んでマンションの防災対策について確認するなら、管理員さんなどに防災訓練の様子を聞いてみましょう。防災に力を入れているマンションは、実際の災害を詳細に想定して訓練を行っています。例えば「震度◯の地震が発生して◯mの津波が押し寄せる可能性がある」「地震によって〇〇室で火災が発生している」などです。
災害時の対応を知識として身に付けていたとしても、いざというときにはなかなか体が動かないものです。実践的な防災訓練を行っているマンションは、災害時の対応力に大きな差があると言えます。
前提として鉄筋コンクリート造りのマンションは、一般的な戸建住宅やアパートに比べて災害に強いです。またマンション単位で備蓄するので、個人では準備が難しい大型の防災備品も揃えられます。ただし、せっかくの防災備品を有効に活用するにはマンション内の防災組織が機能している必要があります。
防災組織が機能していないと「備蓄があってもスムーズに分配できない」「災害用トイレや発電機などの準備が進まない」などのトラブルが発生する可能性が高いです。
近年は、防災に力を入れているマンション管理会社も増えてきています。各社が防災サービスに関する情報をHPなどで発信しているので、検討しているマンションの管理会社のホームページを確認してみましょう。
また、不動産会社も防災に配慮したマンションづくりに取り組んでいます。近年では入居開始時から利用できるように、防災備品を用意しているマンションが多いです。近鉄不動産のローレルシリーズではマンション内に防災倉庫を設置して、ご家庭で準備が難しい機材を中心に防災備品を準備しています。
さらに、各戸玄関横に設置する宅配ボックスと防災備品収納スペースが一体となった専用ボックスも開発しました。
参考:https://www.kintetsu-re.co.jp/uploads/news_D8URAIchpbydVaKEGB.pdf
また警備会社と協力して、マンション居住者の防犯・防災意識の向上を目的とした講座を開催しています。近鉄住宅管理では「防災マニュアルの作成」や「体制づくり」を管理会社にご提案しています。マンション選びの際は、不動産会社や管理会社の防災への取り組みにも注目してみましょう。
防犯・感染症対策について
コミュニティ活動が活発で防災意識の高いマンションは、同じように防犯対策にも取り組んでいます。また有事の際に迅速に対応できる組織体制が整っているため、問題解決もスムーズです。防犯対策には居住者同士が「顔見知り」であることがたいへん有効です。しかし一般的なマンションでは「隣りに住んでいる人の顔と名前が分からない」というケースがよくあります。一方でコミュニティ活動が活発なマンションは、居住者同士が顔見知りで居住者以外の人を見かけたらすぐに分かります。
さらに、日頃から見知らぬ来訪者にも挨拶する習慣があるマンションは、空き巣なども敬遠することが多いです。内見でマンションを訪れた際は、居住者の方とすれ違ったときに挨拶を返してもらえるか確認してみましょう。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、マンションにマスクや消毒用アルコールを備蓄する組合が増えています。備蓄品の手配や管理には、防災対策のノウハウが活かされるケースが多いです。実際に新型コロナウイルスの感染が広がり始めたときに、日頃から防災備品を購入している会社から、マスクや消毒液などをいち早く入手したという話も聞いています。
まとめ
マンションを選ぶ際は入居後の生活をイメージして、地域のコミュニティまで確認しておくことをおすすめします。コミュニティ活動の充実度と防災力は相関関係があることが多く、安心して住み続けるためにも重要なポイントです。近年は新築・中古を問わずに、防災備品を備蓄しているマンションが増えています。多くの不動産会社や管理会社が防災への取り組みを強化していますので、内見の際などに営業担当者に聞いてみましょう。
マンションを購入するには建物自体はもちろん、周辺環境や入居後に「どのような暮らしをしたいか」まで想定しながら物件を比較していくことが重要です。今回紹介したチェックポイントを参考にして、ご自身の納得できるマンション選びを行っていただければ幸いです。