サステナブルとは、地球の資源や自然環境を次世代につなげていくために必要な考え方です。今の時代を生きる人だけでなく、将来世代の豊かさを考える大局的な視点が求められます。
しかしサステナブルな暮らし方は将来世代のために我慢をすることではなく、今の生活を豊かにすることにもつながります。「無駄に資源を使わない」「自然環境や社会が豊かになる消費をする」ことは、経済的で心の豊かさにもつながる行動です。
そこでこの記事では、サステナブルな暮らしの具体例や住まいのポイントについて解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
サステナブルな暮らしとは資源を未来に残していく工夫
サステナブル(Sustainable)とは、sustain(持続する)とable(できる)を組み合わせた造語です。「持続可能」「ずっと続けていける」などの意味を持ち、地球の資源など自然環境を次世代につなげていくための行動指針として使われます。
サステナブルという言葉は、1987年に「環境と開発に関する世界委員会」が公表した「Our Common Future」という報告書の中で使われたことがはじまりです。
報告書では、サステナブルデベロップメント(持続可能開発)として取り上げられ「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」を目指すことがメッセージとして込められました。
「サステナブルな暮らし」は、地球の資源を将来の世代に残していくための暮らしの工夫と理解するのが良いでしょう。
サステナブルな暮らしと似た言葉との違い
地球環境の保護や持続可能性の指針となる言葉は「サステナブル」以外にも数多くあります。こちらでは、サステナブルと似た意味の言葉の違いについて解説します。
エコ
エコとは「エコロジー(ecology)」の略で「環境にやさしい」という意味合いで使われます。例えば「エコバッグ」は、レジ袋の製造過程と廃棄で発生するCO2排出量を削減できるため、エコな製品と言えます。一方で、サステナブルは、環境保護だけでなく、経済成長や社会的包括性などの複数の要素を含んだ概念です。エコは、サステナブルとは違い地球環境に特化した用語であると理解しましょう。
エシカル
エシカル(Ethical)は「倫理の」「道徳的な」という意味の言葉です。「地球環境だけでなく人や社会に配慮した行動」という意味で「エシカル消費」といった言葉で使われることが多くあります。例えば、発展途上国の原料や製品を適正価格で取引し、生産者の労働環境を守る基準を満たした「フェアトレード商品」、化学肥料や農薬の使用を制限した「オーガニック製品」を購入するなどの行動が挙げられます。エシカルは、サステナブルに比べて「より生活者個々の視点で捉えた行動」という意味合いが強い言葉です。
SDGs
SDGs(Sustainable Development Goals)とは、2015年9月の国連サミットにおいて、加盟国全会一致で採択された「サステナブルな社会を実現するための持続可能な開発目標」です。以下の17の目標が設定され、さらに細分化された169のターゲットから構成されています。画像引用:SDGsってなんだろう? | SDGsクラブ | 日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)
17の目標は自然環境の持続性に関する目標だけでなく、貧困や教育問題など人間らしく生きていくための社会目標、雇用や格差の克服など経済目標も掲げられています。また、目標を達成するための関係機関のパートナーシップの構築を重視していることも特徴です。
SDGsには「細分化された目標が掲げられている」という違いがあるものの、サステナブルとほぼ同じ意味で使われています。
サステナブルな暮らしのためにできる7つの具体例
次世代に資源を残していくためには、どのような暮らしの工夫ができるでしょうか。こちらでは、サステナブルな暮らしのためにできる7つの具体例を紹介します。
節電・節水を心がける
節電・節水は、身近で誰もが取り組みやすい行動と言えます。使っていない部屋の電気をこまめに消す、水を出しっぱなしにしないなどの基本的なことを心がけましょう。また省電力の家電が数多く普及しているので、買い替えの際には消費電力に注目して製品を選ぶと良いでしょう。特に電気使用量の大きい冷蔵庫や照明器具の省エネ製品への交換は、効果的です。
環境省によれば、2010年に比べて2020年の冷蔵庫は消費電力が約37〜43%少ないとされています[注1]。また、照明をLEDに換える省エネ効果は約86%もあります[注2]。家電の買い替えの際には、省エネ性能に注意して製品を選んでみてください。
[注1]環境省 COOL CHOICE |2020年 VS 2010年 最新家電と10年前の家電どのくらいおトク?
[注2]環境省 COOL CHOICE |LED照明への買換え効果
【関連記事】省エネのためにできること! 家庭でできる電気・ガスなどの節約方法
マイボトル・マイバッグを持ち歩く
マイボトル・マイバッグの利用は、ペットボトルやレジ袋の製造や処理の際に発生するCO2の削減やプラスチックの過剰な利用を抑制する効果があります。外出の際にマイボトルを持ち歩くことで、ペットボトルなどの使い捨て容器を使わなくて済みます。マイボトルは持参することで割引を受けられる店もあるため、経済的にもお得と言えます。
また、2020年7月からレジ袋は有料化されているので、買い物に行く際はマイバッグを持参するようにしましょう。
洋服はリメイク・リユース・レンタル・シェアする
洋服を買う習慣を見直すことは、サステナブルな暮らしにとって大切です。低価格な洋服を短いサイクルで使う生活は、生産や廃棄の過程で多くのエネルギーを使用し、CO2の排出にもつながります。古くなった洋服は自身でリメイクして再利用しましょう。また「子ども服など着る期間が短いものはリユースを利用する」「着る機会が少ない晴れ着はレンタルやシェアで済ませる」などの工夫が大切です。
環境や生産者に配慮した商品を購入する
買い物をする際には、サステナブルに配慮した商品を購入しましょう。環境や生産者に配慮した商品を生産・販売している企業を応援することにつながります。具体的には、フェアトレード商品や化学物質を使わないオーガニック製品などが挙げられます。商品に添付されている「エコマーク」や「バイオマスマーク」、「フェアトレードマーク」などの認証を参考に商品を選ぶと良いでしょう。
地元で生産された食材を買う
地産地消商品の購入は、運搬で発生するエネルギー消費の削減につながります。エネルギーの削減だけでなく、小規模農家の支援や地域の食文化を残す上でも大切です。地産地消商品は道の駅などの直売所だけでなく、大手のスーパーでも販売されています。新鮮な食材がお手頃な価格で手に入るので、近くのスーパーで探してみましょう。
フードロスを減らす
フードロスとは、食べられるにもかかわらず廃棄される食品のことです。世界では、食糧生産量の約3分の1がフードロスになっている現状があります。消費者庁の「令和3(2021)年度食品ロス量推計値の公表について」[注3]によれば、日本のフードロスの量は年間523万トンにもなります。フードロスの削減は、資源の有効活用や廃棄した食品の処理にかかる環境負荷を減らす上で大切です。フードロスを防ぐには「余分な食材を買わない」「賞味期限の近い商品から買う」などの工夫が推奨されています。
[注3]消費者庁|令和3(2021)年度食品ロス量推計値の公表について
ディスポーザーを利用する
ディスポーザーとは、台所の排水口に取り付けて使用する生ゴミ処理機です。生ゴミを排水口から流すと、粉砕されて水道水とともに排出される仕組みです。生ゴミは水分を多く含んでおり焼却には大量のエネルギーが必要であるため、環境負荷が大きくなります。ディスポーザーを使うことで、化石燃料を使わずに生ゴミ処理できるため、CO2排出量の削減に効果的です。
ディスポーザーには様々な種類がありますが、日本国内では日本下水道協会の規格に適合している製品しか使用できない点に注意が必要です。
【関連記事】マンションでもディスポーザーを導入できる! メリットと注意点や取り付け方法まで詳しく紹介
サステナブルな暮らしを実現できる住まいの4つの特徴
サステナブルに配慮した家は、環境負荷の削減や健康的な生活を実現できます。これから家を建てることを検討している方は、サステナブルな家の性能や機能について理解しておきましょう。
再生可能エネルギーの活用と蓄電システムの導入
エネルギー使用による環境負荷を減らすには、再生可能エネルギーの活用がポイントです。具体的には「太陽光発電システム」や「地熱を利用した空調システム」などの設備の導入が考えられます。また、発電システムは蓄電も合わせて考えることが必要です。蓄電システムがあれば、昼間作った電気をためて、夜間に使うことが可能になります。【関連記事】家庭用太陽光発電のメリット・デメリット!設置する前に知っておきたい太陽光発電の特徴
断熱性・気密性を高める
住宅の断熱性や気密性を上げることで、冷暖房のエネルギー消費を削減でき、外気温の影響を受けにくい快適な住まいづくりができます。日本では2012年に省エネ10%を基準にした「低炭素建築物認定」、2025年には「省エネ基準適合義務化」がスタートします。「省エネ基準適合義務化」が実行されると、断熱材の厚さや窓の構造などの基準を満たす必要があります。
また省エネルギーだけでなく、発電機能も備えることで消費エネルギー収支ゼロを目指す「ZEH基準」を満たした住宅の普及も、2030年までの政策目標とされました。今後は断熱性・気密性、さらに発電機能の備えが新築住宅を建てる際に必須の条件になる可能性があります。
【関連記事】住宅にとって重要な断熱とは? メリットや重要なポイントも解説
耐久性の高い構造にする
廃棄物や建築にかかるエネルギー消費を減らすために、住宅を耐久性の高い構造にすることが大切です。住宅の高耐久性能はハウスメーカー等で研究が進められ「高強度のパネルを用いる」「躯体の接合を強化する」など様々な工法が生まれています。日本の木造住宅は30年程度が寿命と考えられてきました。しかし現在は、耐久性の高い家を国が「長期優良住宅」として認定する制度が設けられました。長期優良住宅では「長期に使用するための構造及び設備を有していること」など複数の条件が課されています。今後住宅を新築する場合には、高い水準の耐久性が求められるでしょう。
【関連記事】住宅の寿命期間はどれくらい? 寿命を延ばす方法や寿命がきた時の対処法
国内産の木材を使う
住宅の施工段階においては、国内産の木材を使うことが大切です。住宅の木材資材の多くは、輸入に大きく依存しているのが現状です。国内産の木材の利用は、輸送時に発生するCO2の排出量を削減し、国内の森林整備や地域経済の活性化にもつながります。国内産の木材を積極的に活用しているハウスメーカーは数多くあるので、施工会社選びの際に確認してみると良いでしょう。
マンションにおいては、集合住宅のZEH基準「ZEH-M Oriented (ゼッチ・マンション・オリエンテッド)」が経済産業省により定められています。「ZEH-M Oriented」とは、共用部を含め一次エネルギー消費量の20%以上削減を目指したマンションです。
一次エネルギー消費量とは、冷暖房や給湯など住宅で使われているすべての設備機器のエネルギーを熱量に換算した値のことです。「ZEH-M Oriented」は、大幅なエネルギー削減を実現したマンションと言えます。
【関連記事】ZEH(ゼッチ)マンションで光熱費ゼロって本当? 話題のZEHマンションの仕組みやメリットとは
【関連リンク】ZEH-M Oriented マンションへの取り組み計画について | 美しく時を刻む 近鉄不動産のマンション「ローレル」 (kintetsu-re.co.jp)
サステナブルな暮らしは身近な取り組みから始めてみましょう
サステナブルな暮らしは、地球の資源を次世代につないでいくための大切な概念です。大局的、長期的な視点を求められますが、一人ひとりの身近な行動が自然環境や社会の持続性に大きな影響を与えます。
またサステナブルな暮らしを実現するには、住宅も重要なポイントです。省エネ性能や高耐久性などを備えた家を建てることは、効率の良いエネルギー利用やゴミの廃棄量を減らす上で欠かせません。
サステナブルな暮らしを目指す方は、まず今できる身近なところから行動を始めてみてはいかがでしょうか。