ユニバーサルデザインの家は、高齢者や障がい者だけでなく、誰もが住みやすいように設計されています。近年は断熱性などの住宅性能の向上や、ユニバーサルデザインに配慮した設備や家電が普及してきたことから導入のハードルは低くなってきています。
一方でバリアフリーとの違いや、ユニバーサルデザイン導入のポイントがわからない方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、ユニバーサルデザインの具体例や家づくりのポイントについて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
ユニバーサルデザインの家とは?バリアフリーとの違いを解説
ユニバーサルデザインの家とはどのような住宅を指すのか、定義とバリアフリーとの違いについて解説します。
ユニバーサルデザインの家とは?
ユニバーサルデザインとは、高齢者や身体に障がいのある方だけでなく、すべての人にとって使いやすい設計を指します。ユニバーサルデザインは、アメリカの建築家ロナルド・メイス博士が提唱し、以下の7つが原則としてまとめられています。- Equitable Use(誰でも公平に利用できる)
- Flexibility in Use(好みや条件に合わせて使える)
- Simple and Intuitive Use(使い方が簡単である)
- Perceptible Information(情報がわかりやすい)
- Tolerance for Error(ミスが危険につながらない)
- Low Physical Effort(身体への負担が少ない)
- Size and Space for Approach and Use(使いやすい大きさと広さがある)
ユニバーサルデザインの家を設計する際には、部屋や設備を上記の原則に照らして確認してみると良いでしょう。
バリアフリーとの違い
ユニバーサルデザインはバリアフリーと似た言葉ですが、目的や対象者の範囲が異なります。バリアフリーは、主に高齢者や障がい者といった体の不自由な方の障壁を取り除くことが目的です。一方でユニバーサルデザインは、身体の不自由な方だけでなく性別や文化などが違う、すべての人にとってわかりやすく、使いやすい設計にすることが目的です。ユニバーサルデザインはバリアフリーと比べて、目的や対象がより広範囲であると理解しておきましょう。
ユニバーサルデザインの家を作るメリット・デメリット
ユニバーサルデザインはすべての人の使いやすさが考えられているため、メリットしかないように感じる方も多いでしょう。
しかし、導入に当たっての課題もあります。ユニバーサルデザインの家を作りたいという方は、メリットとデメリットどちらも理解しておくことが大切です。
メリット
ユニバーサルデザインの家を作るメリットは、家族や来訪者などすべての人にとって使いやすい住宅であることです。例えば、声で操作できる家電があれば、子どもでも使いやすくなります。また、今は問題がなくても、病気や加齢によって身体が不自由になることは考えられます。将来に渡って、誰もが快適に暮らせることがユニバーサルデザインのメリットであると理解しておきましょう。
デメリット
ユニバーサルデザインのデメリットは、コストと広いスペースの確保です。例えば、玄関アプローチをスロープにするには、数十万円のコストが必要となります。さらに安全性を高めるためにフットライトや人感センサーライトを設置すれば、その分コストが増加するでしょう。安全性の向上や車椅子の利用を想定した場合、キッチンやトイレなどあらゆる場所で広いスペースが必要になります。一つひとつの場所に広いスペースを確保していくと、部屋数を減らすなどの対応が求められる場合があります。
ユニバーサルデザインを導入する際には、実現可能なコストと広さとの折り合いが求められるでしょう。
【場所別】ユニバーサルデザインの家の具体例
ユニバーサルデザインは、家の中の様々な場所に取り入れられます。こちらでは、場所別にユニバーサルデザインの具体例を紹介します。
玄関アプローチ
引用元:エクステリア:石川県金沢市S様邸|株式会社エフ
玄関アプローチのユニバーサルデザインの例としては以下の項目が挙げられます。
アプローチは屋外であるため「雨風にさらされる」「夜間は暗い」などのリスクがあります。滑り止め付きのタイルや自動点灯の照明などは、玄関アプローチの安全性の向上に有効です。
玄関
引用元:皆が快適に暮らせる住まい=“ユニバーサルデザイン住宅”|その定義やポイントとは? | 日建ホーム
玄関では以下のようなユニバーサルデザインに配慮した設計が可能です。
玄関の間口が広いと、大きな荷物の出し入れや車椅子での移動が楽になります。間口を広げるには開き戸の場合は「親子ドア」、引き戸の場合は「袖付2枚引き戸」がおすすめです。
親子ドアは大と小の2つの扉が両開きになるため、全面開放で広い間口になります。
引用元:リフォーム用 玄関ドア~リシェント(親子ドアタイプ)~ | 秋田市|LIXILリフォームショップ
袖付2枚引き戸は3枚のパネルで構成され、開く際に2枚が引き込まれる構造です。一般的な2枚の構成に比べて、間口を広げられます。
引用元:玄関引戸を2枚連動引き込み戸にしました。 | 北国増改センター
また、開き戸には開けた時に吊元に隙間ができない「指詰防止ストッパー付きの窓」や、軽い力で開ける「プッシュプルハンドル」など、便利な製品が数多くあります。
階段・廊下
引用元:注文住宅でバリアフリーやユニバーサル・デザインを取り入れる~使いやすい形状を考えよう~ | takumiの住宅・建築相談所
階段や廊下は、玄関や居室と違い細かな配慮がおろそかになりやすい場所ですが、事故が起こりやすい場所であるため安全への配慮が大切です。階段や廊下におけるユニバーサルデザインのポイントは、以下の項目が挙げられます。
階段は踏み板を周りと色を変える、すべり止めをつけるなどの方法で、踏み外しを防止できます。階段の手すりは段差部分だけでなく、踊り場にもつなげて設置することが効果的です。踊り場で支えがなくなるとバランスを崩したり、方向転換がしにくくなったりする方もいます。
また夜間は、まぶしさを感じない程度の光による安全性の確保が大切です。壁や床を照らす手すり照明は、目に優しく安全性も高められるためおすすめです。
リビング
引用元:近鉄のリフォーム「NEWing」事例集
リビングはご家族やご友人とゆったりくつろぐためのスペースであるため、より快適性が求められます。リビングのユニバーサルデザインとしては、以下の6項目が挙げられます。
ドアは、車椅子の方でも開けやすい引き戸がおすすめです。ソフトクローズの引き戸であれば、指挟みなどの事故を防止できます。
また断熱・床暖房は、長い時間を過ごすリビングには欠かせません。断熱窓や断熱性の高い壁・床材の設置のほか、床暖房を設置できれば「ふく射熱」によって部屋を均一に暖められます。
年齢によって明るさの感じ方が違うため、照明は調光機能付きがおすすめです。若い方にとっては高齢者が必要とする照度ではまぶしすぎることもあります。
キッチン
引用元:近鉄のリフォーム「NEWing」事例集
キッチンは、複数人が入っても安全に作業できる十分な広さがあることが大切です。各設備は、以下の項目がポイントになります。
キッチンは食器など物が多いため、収納の使いやすさが大切です。シンク上部の収納は、スイッチで昇降できるオートダウン式であれば、背の高さに関わらず使いやすくなります。
またシステムキッチンには、足が入るニースペースが付いていると、着座や車椅子での作業が可能です。立ち作業が辛い方は、料理の際のストレスを大きく減らせるでしょう。
浴室
引用元:近鉄のリフォーム「NEWing」事例集
浴室は、一日の疲れを取ったり、リラックスできる空間です。一方でヒートショックや転倒など、高齢者にとって深刻な事故が起きやすい場所であるため、安全性への配慮が求められます。浴室のユニバーサルデザインとしては、以下の点が挙げられます。
浴室暖房機は急な温度変化を防げ、高齢者に多いヒートショックのリスクを下げられます。また身体が不自由な方にとっては、座って浴槽に移動できるベンチカウンターや浴槽内の手すりがあると便利でしょう。
【関連記事】ヒートショックの対策とおすすめのリフォーム 起きてしまった場合の対策も紹介
洗面化粧台
引用元:近鉄のリフォーム「NEWing」事例集
洗面化粧台は、メーカーからユニバーサルデザインの製品が数多く提供されています。ユニバーサルデザインの製品には、主に以下のような機能が備わっています。
多くの洗面化粧台の下部は収納になっていますが、足を入れるニースペースがあると着座や車椅子での使用ができます。またセンサー式水栓は、ハンドルを触らなくて済むため衛生的です。
洗面化粧台は、背の高さによって使いやすさが変わることも特徴です。ミラー下照明など広範囲を照らせる照明があると、背の低い子どもであっても顔に照明が届くため利便性が高まるでしょう。
トイレ
引用元:近鉄のリフォーム「NEWing」事例集
トイレは、子どもや高齢者など誰もが自分で用を足せることが大切です。また安全性や清潔性が確保できることは、快適さにつながるポイントと言えます。トイレのユニバーサルデザインの例は、主に以下が挙げられます。
便フタを手動で開閉するにはかがむ必要があるため、高齢者にとっては足腰の負担になるので、人感センサーで自動化されていると便利です。。
また深夜に起きてトイレに行く際、強い照明は目を覚ましてしまう可能性があるため、照明は便器内部や周辺をやさしく照らすライトがおすすめです。
耐汚性・耐アンモニア性の床材は、トイレ内の臭いや汚れを防ぐ効果があります。こまめな掃除は大切ですが、汚れを防ぐ床材は常に快適さを保つために有効です。
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ユニバーサルデザインの家を作る4つのポイント
ユニバーサルデザインは、家の様々な場所で取り入れられます。こちらでは、場所に限らず共通する、ユニバーサルデザインの家を作るポイントを4つ紹介します。
段差の解消
家の中の段差解消は、ユニバーサルデザインの共通するポイントです。車椅子の方だけでなく、高齢者や子どもはちょっとした段差でもつまずき転倒するリスクがあります。また、段差はお掃除ロボットを使う際の障害にもなります。部屋同士や廊下との間に段差がなければ、お掃除ロボットが自由自在に動き清掃してくれるため、掃除の手間を減らすことが可能です。
スペースの確保
誰もが安心して利用できる家には、広いスペースの確保が大切です。キッチンや洗面所など同じ時間帯に複数人が利用する場所では、全員が安全にスムーズに作業できるように、広いスペースがあるといいでしょう。また、トイレや浴室は車椅子の回転や介助者が入れるスペースが求められます。複数の人が同じ場所を利用することや、車椅子の利用を想定した広いスペースを確保すると、長く安心して住める家になるでしょう。
空調の整備
家の中で快適に過ごすには、適切な室温を維持することも重要です。室温の管理は快適さだけでなく、ヒートショックなどの事故を防止する上でも必要になります。空調を整備するなら、家全体の温度管理ができる全館空調をおすすめします。部屋や廊下間での温度差がなくなるため、ヒートショックの防止に効果的です。
住宅設備や家電の自動化
住宅設備を誰もが使いやすくするには、電源の自動化が効果的です。子どもや来訪者など使用方法がわからない方でも、利用が制限されないためです。例えば照明の自動化は「スイッチの場所がわからない」「手が届かない」などの不便さを解消できます。家電では、スマート家電やスマートリモコンなど音声での操作が可能な製品の活用も良いでしょう。
ユニバーサルデザインのポイントをおさえた家づくりをしましょう
ユニバーサルデザインの家は、すべての人にとって安全で使いやすいことが求められます。現在は、ユニバーサルデザインに配慮した住宅設備や家電などが普及してきたことから、導入のハードルは低くなってきています。
ただし、ユニバーサルデザインの家を設計する際には、コストが上がることや広いスペースが必要になる点への理解が必要です。
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