相続の際など、不動産の価値を公的な基準で確認したい場面があります。不動産の価値を算出する方法で、最も客観的な評価を得られるのが「不動産鑑定」です。
 
不動産の価値を正しく評価する方法について理解していないと、不動産を相続する際や、財産分与を行う際など正しい資産総額を出すことができないなどの問題が生じる可能性があります。
 
この記事では、不動産鑑定の流れや、不動産鑑定以外の評価方法ついても紹介しているので、参考にしてください。

不動産の評価額を算出する方法

不動産の評価額を算出する方法
不動産の価値を算出する方法は2つあり、評価方法や金額が異なります。2つの方法それぞれの適切な使い分けができるようになることが大切です。

不動産鑑定

不動産鑑定とは、不動産鑑定士が「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づき行なう評価方法です。不動産鑑定士は、不動産鑑定評価の高度な知識を有することを証明する国家資格です。
 
不動産鑑定は法律に基づく評価方法であるため、相続などの場面でも法的な効力を持ちます。法的な効力を持つ不動産評価は、不動産鑑定のみです。
 
不動産鑑定の結果は、不動産の鑑定評価に関する法律第39条に基づき「不動産鑑定評価書」としてまとめられます。「不動産鑑定評価書」には金額だけでなく、評価決定理由等が記載されます。

不動産査定

不動産査定とは、不動産鑑定士ではなく不動産会社が行う評価です。不動産会社が、不動産を売却する際に見込まれる金額を独自に見積もった価格であるため、必ずしも客観的な価格とは言えません。
 
あくまで、市場における実勢価格を計る評価方法と理解しておけばいいでしょう。
 
基本的には不動産査定は無料で利用できるため、主に不動産の売買を検討している方などに活用されています。不動産査定を利用する際には、複数の不動産会社に見積もりを算出してもらい、それらを比較したうえで相場を把握すると良いでしょう。

不動産鑑定が必要な3つの場面


法律に基づいた客観的な評価額が求められる場合は、不動産鑑定を行う必要があります。こちらでは、不動産鑑定が必要な主な場面を解説します。

不動産を相続するとき

不動産を相続する際に、評価額の算定が求められるケースがあります。相続人が複数人おり、この場合は不動産鑑定を行うことで、評価額を客観的に求める必要があります。
 
また相続人の間で遺産の分割の話し合いがつかなかった場合、家庭裁判所に調停を求めることになりますが、不動産鑑定を行っていれば、不動産鑑定書を裁判で活用することができます。

財産分与を行うとき

相続や、離婚などで不動産を含む財産分与を行う際にも、不動産鑑定で評価額を算出しておく必要があります。不動産は物理的に等分不可能であるため、金銭換算をしなければならないためです。
 
また、財産分与の話し合いがまとまらなかった場合には、家庭裁判所の調停に頼る必要があります。裁判で不動産の評価額が適正であることを証明するために、法的な効力のある「不動産鑑定書」を用いることができます。
 

不動産売買を行うとき

不動産売買を行う際は不動産査定で自宅などの価値を調べるのが一般的ですが、客観的な評価額を知りたい場合には不動産鑑定を行いましょう。
 
不動産査定は、明確な算出方法が定められていないため、不動産会社によって評価額が変わります。不動産査定の結果を見て「思ったよりも金額が低い」「本当にこれが適正価格なのか」と疑問に感じることもあるでしょう。
 
一方で、不動産鑑定は法律に基づいた評価であるため、客観性が担保されます。また、算出金額の根拠や算出に用いられたデータが「不動産鑑定書」に記載されるため、納得感を得られる方法と言えます。

不動産を担保として利用したいとき

不動産を担保に融資を受ける場合には、不動産鑑定士による鑑定評価書が担保価値を判断する材料になります。不動産の担保は債権者が返済できなくなった際に、資金の回収を図るためのものです。そのためには、融資額に合った価値のある担保を確保する必要があります。
 
不動産鑑定書は、金融機関にとって融資に対して妥当な担保であるか判断するための材料になります。
 
 

不動産鑑定に必要な費用


不動産鑑定に必要な費用は、一般住宅の場合約20万円が下限です。土地と建物の不動産鑑定の費用相場は、以下の表を参考にしてみてください。

不動産鑑定に必要な費用は、一般住宅の場合約20万円が下限です。土地と建物の不動産鑑定の費用相場は、以下の表を参考にしてみてください。
 
不動産鑑定では、鑑定評価額が高いほど費用も高くなる傾向があります。一般住宅であっても、土地の広さや建物の大きさによって金額が変わると理解しておきましょう。
 
一方で不動産会社が行う「不動産査定」は、基本的には無料で行われます。

不動産鑑定の流れ4ステップ

不動産鑑定の流れ4ステップ
不動産鑑定は、不動産鑑定士への委託契約から不動産鑑定評価書の受け取りまで、約2週間の期間が必要です。こちらでは、不動産鑑定の流れを4つのステップに分けて解説します。

不動産鑑定事務所を探す

まずは鑑定を依頼する不動産鑑定事務所を、インターネットや不動産鑑定士協会で探します。
 
不動産鑑定士協会とは、日本不動産鑑定士協会連合会の元、各都道府県に設置されている団体です。この協会では所属する不動産鑑定士の紹介だけでなく、無料で利用できる相談会の開催などの活動も行っています。

必要書類を揃える

不動産鑑定士に評価を依頼する際には、以下の2つの書類が必要です。


●登記簿謄本
●建物図面
 
登記簿謄本は、基本的には法務局で取得できます。法務局に足を運ばなくても、郵送やインターネットから請求ができます。建築図面がない場合は、法務局で入手できます。

調査を依頼する

必要書類が整ったら、不動産鑑定士に評価を依頼しましょう。不動産鑑定士は評価を行うために「書面調査」と「実地調査」の2つの調査を行います。書面調査とは、登記簿謄本や取引事例などの資料を用いて行う調査です。
 
実地調査は、書面で確認した内容を現地で確認する作業になります。具体的には、建物の内覧や写真の撮影を行います。

不動産鑑定評価書を受け取る

調査が完了したら、不動産鑑定士から不動産鑑定評価書を受け取ります。不動産鑑定評価書の内容は、不動産鑑定士から説明されます。
 
このとき、評価額は不動産鑑定評価書に記載された日付時点のものであることに注意してください。同じ不動産であっても、調査を行った時期によって評価額が変動する可能性があります。

不動産鑑定の評価方法

不動産鑑定は、法律で定められた「不動産鑑定評価基準」に基づいて行われます。こちらでは、不動産鑑定評価基準による評価の方法と、評価額に影響を与える要因について解説します。

評価額の算出方法

不動産評価額は、以下の3つの方法で算出されます。
 
不動産評価額は、以下の3つの方法で算出されます。不動産評価額は、以下の3つの方法で算出されます。
不動産評価額は、この3つ方法を組み合わせて算出されます。

評価額に考慮する要因

不動産鑑定評価は、以下の3つの要因を考慮して価格を算出します。
 
 
不動産鑑定評価は、以下の3つの要因を考慮して価格を算出します。
このように評価額の算出には、不動産固有の問題だけではなく地域や社会経済情勢など様々な点が考慮されます。

客観的な評価額を確認する際には不動産鑑定を行いましょう

客観的な評価額を確認する際には不動産鑑定を行いましょう
不動産価格の評価方法は、不動産鑑定や、不動産会社による不動産査定などの方法があります。しかし、「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づき客観的な評価ができるのは不動産鑑定士による不動産鑑定のみです。
 
不動産査定が概ね無料であるのに対し、不動産鑑定には多額の費用がかかります。それでも、相続や財産分与など公的な場面で評価額を示す必要がある場合には、不動産鑑定が必要になります。

信頼できる専門家に相談して後悔ない選択をしてくださいね。

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