Ceramic art

モダンな飴色の器や表情豊かな器と出逢う

民藝の聖地といわれる島根県には、若者にも人気の出西窯(しゅっさいがま)やエッグベーカーで有名な湯町窯、表情豊かな釉薬づかいが印象的な袖師窯などが点在。器の魅力はもちろん、受け継がれる民藝の精神、作り手の想いやこだわりを前編・後編に分けてご紹介。今回は、湯町窯と袖師窯に着目します。

前編はこちら


湯町窯(島根県松江市)

山陰を代表する温泉街「玉造温泉」のすぐそばにある湯町窯。1922年(大正11年)に創業し、現在は3代目の福間琇士さんと4代目の庸介さんが民藝の精神を受け継ぎながら作陶しています。看板商品であるエッグベーカーやスリップウェアの器たちは北欧食器のような温かみとモダンな雰囲気を持ち、世代を超えて人気を博しています。


湯町窯の器たち

湯町窯を語る上で欠かせない「エッグベーカー」。英国人の陶芸家・バーナード・リーチ氏の指導によってつくられ、愛らしい模様とフォルムが印象的。こちらでつくる目玉焼きはバターや油が不要で、卵本来の香りやまろやかで濃厚な味わいが楽しめ、半熟のプルンとした食感も絶妙です。直火だけでなく電子レンジやオーブンにも対応し、グラタンやアヒージョ、蒸し料理などに使えるのもうれしいポイント。
エッグベーカー(大)4,400円

バーナード・リーチ氏の指導でつくられたコーヒーカップ。「唇が喜ぶように」と工夫された飲み口は口当たりがよく、スプーンで混ぜやすいようカップの中は丸型に。また、リーチ氏から伝授されたウエットハンドル手法でつくられた持ち手も特長です。ハンドルに中指を入れ、親指はハンドル上部の指置きに、薬指はハンドル下部のくぼみにフィットし、握力の弱い女性でも持ちやすい形状です。
黄釉かけわけコーヒーカップ3,850円

リーチ氏伝授の「スリップウェア」という技法で描かれた模様が大きな特長。筆書きのように描かれたものや皿の縁に円を描いたものなど、模様の種類も実に多彩。スリップウェア以外にも、シンプルな柄の器や大胆な色使いが目を引く平皿もあります。
スリップウェア小皿660円〜・小判皿1,320円・平皿2,310円/黄釉かけわけ平皿2,420円(写真2枚目右端)

地元産の石を原料につくられる釉薬「黄釉(きぐすり)」を使った飴色のような黄味がかった器をはじめ、温かみのある様々な色合いも魅力。楕円や四角、深さのある器など、様々な種類の食器がそろい、工房に併設されているお店では、じっくりと器を選ぶ若い女性客の姿も。
スリップウェア楕円皿7,150円/黄釉角深鉢2,420円/スリップウェア角皿 8号26,400円


湯町窯の工房

器づくりに欠かせない土や釉薬の原料となる来待石(きまちいし)や凝灰岩(ぎょうかいがん)が地元でとれ、来待石は黄釉の原料に。温かみのあるきれいな黄色は、リーチ氏が「イギリスでも同じような色味がある」と興味を持ち、スリップウェア伝授のきっかけになったとか。器の成形は型を使って効率化を図りながら、「地元産の原料を使い、地域の特色がにじむものをつくり続けたい」と3代目の福間琇士さんは語ります。

リーチ氏から福間さんの父である2代目に伝授されたスリップウェア。ドロッとした化粧土をかけた器の上に、スポイトを使って別の色の化粧土で模様を描いていきます。「乾く前に素早く描かなければいけませんから、せっかちな私に向いている技法です。父を通じてリーチ先生の技法を受け継ぎながら、新たな模様をつくりだすのが楽しいですね」

製作風景動画

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湯町窯 福間さんにインタビュー

1931年(昭和6年)、民藝運動の中心メンバーである河井寬次郎氏や濱田庄司氏、バーナード・リーチ氏から指導を受け、“用の美”を体現する西洋食器をつくり始めた湯町窯。工房にあるモノクロ写真には、リーチ氏から指導を受ける父の貴士さんと若き日の福間さんの姿も。リーチ氏の教えは、今も器づくりの基礎になっていると話します。「用に徹する。これはずっと守り続けています。あとは、ウエットハンドルやスリップウェアの技法と地元の原料を使った釉薬は、これからも残していきたいですね」

スリップウェアのお話になると、作り手としての喜びが表情からうかがえる福間さん。「リーチ先生に教わったことだけでよいわけでもなく、“用の美”から外れない範囲で、料理の邪魔にならない程度に、スリップウェアでいろんな表現を模索しています。僕の代になってからも試行錯誤でいろんな柄を探求していて、それこそ模様は無限にあり、探求するのが楽しいですね」


湯町窯

[住]島根県松江市玉湯町湯町965
Tel 0852-62-0726

[時]平日8:00〜17:00、土日祝9:00〜17:00 
[休]無休(年末年始を除く)


袖師窯(島根県松江市)

美しい夕日で知られる宍道湖の畔に佇む袖師窯。 1877年に開窯し、145年の歴史を持つ老舗の窯元です。出西窯や湯町窯と同様に、 1931年(昭和6年)に民藝運動の中心メンバーから指導を受け、現在は民藝の精神を継承しながら5代目の尾野友彦さんと3人の職人が器づくりに励み、表情豊かな器がつくられています。


袖師窯の器たち

藍色と飴色の2本の細いラインが愛らしい十草(とくさ)模様の器は、和食の盛り付けが楽しくなりそうな逸品。小皿や鉢、茶碗などがあり、食卓のアクセントになるデザインです。
十草小皿1,100円・丸形鉢(小)2,640円

藍色と飴色の縦縞が印象深い「二彩」シリーズも袖師窯を代表する器。こちらは4〜7寸の深皿をはじめ、カレー皿や湯呑や茶碗などもラインナップ。食卓にほどよく彩りを添えたいときに重宝します。カップアンドソーサは、ソーサの縁に藍色と飴色の模様を施し、彩りがありながら上品な雰囲気。
二彩深皿4寸(約12cm)1,980円・7寸(約21cm)5,280円/カップアンドソーサ3,520円

L字型の藍色と飴色の模様を配した四角鉢や呉須釉の青色の縁を持つ梅型鉢は、和菓子やおつまみなどを盛り付けたり、取り皿として使ったり、なにかと便利な器。品のある佇まいで盛り付けるお菓子や料理を引き立たせてくれます。また、欧風な趣を持つ楕円鉢といったシンプルながら風合い豊かな器もそろいます。
ぬか白四角鉢(中)3,740円/梅型鉢(小)2,860円/しのぎ楕円鉢(小)4,400円(大)8,800円


袖師窯の工房

すぐ近くで土や釉薬の原料がとれ、創業から現在も変わらず昔ながらの手法で土や釉薬をイチからつくっています。写真の職人さんは、尾野さんの祖父である3代目の時代から在籍する大ベテラン。昔は今ほど流通が発達しておらず、自分たちで全てつくるしかなかったとか。手間はかかる分、つくりたいものに合わせて細かく調合できるメリットがあるようです。

趣深い建物の中で静かに作陶する職人たち。電気を使わず、足でろくろを回す「蹴りろくろ」を自在に操り、手際よく成形していきます。工房内も見学でき、職人たちの技を間近に見ることができるのも袖師窯の魅力。

製作風景動画

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袖師窯 尾野さんにインタビュー

落ち着きのある色味や模様で、食卓をほどよく彩ってくれる器をつくり続ける袖師窯。窯主の尾野さんに器づくりのこだわりをお聞きしました。「日用の食器として使えるかどうか。ここが一番こだわっていることですね。3代目である祖父が諸先生方から指導を受け、日常生活に耐えられるよう高温で焼くようになり、材料も地元の物にこだわってきました。ただ、時代も移り変わり、生活様式もガラリと変わりましたよね。

父の代になると、住まいも洋風が主流になって部屋の中が明るくなり、渋い食器より明るい食器が好まれるようになりました。使っている釉薬はそのままに白化粧を使って発色をよくしたり、模様の付け方も変わりました。模様や色使いは時代の変化に合わせた結果ですね」

受け継がれた民藝の精神とはどのようなものなのでしょうか。「私も、 “今の暮らし”に合うように器を薄く軽くしたり、料理の盛り付けを意識したり、使いやすさや美しさを求めて厚みや角度を考えながらつくっています。試行錯誤の連続ですが(笑)。諸先生方から祖父へ、さらに父へと受け継がれた民藝の精神は、私にとってもひとつの軸になっています。主役はあくまで使う方。使い手のみなさんには民藝といっても気負わずに、自分がいいと思った物を選んで使っていただきたいですね」


袖師窯

[住]島根県松江市袖師町3-21
Tel 0852-21-3974

[時]9:00〜18:00 
[休]日曜

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