マンションの購入を検討する際は、モデルルーム見学や内見で部屋の中をじっくりと確認するでしょう。一方で建物自体や共用部分にも「見るべきポイント」はたくさんあります。また長い人では数十年と住んでいくマンションなので、住みやすさや資産価値を維持する点において「管理」が非常に重要です。
そこで今回は「敷地・建物」と「共用部分・管理」という視点で、元不動産営業マンがマンション選びでチェックするべきポイントについてお話します。実際に「管理の行き届いた物件を見極めるコツ」も解説しますので、ぜひ参考にしてください。
敷地・建物
初めてマンションを見るとき、最初に目に入るのは建物の外観です。マンションの外観は大きく「タイル貼り」と「吹付け塗装」の2つに分けられます。傾向として近年のマンションにはタイル貼りが多く、吹付け塗装はそれ以前に主流であった工法です。タイル貼りのほうが汚れがつきにくく、メンテナンスがしやすい特徴があります。ただし、タイル貼りの場合はひび割れや浮きがないか、定期的にチェックしておかなければなりません。タイルの破損は建物の劣化を早めるだけでなく、落下により通行者が怪我をするリスクがあります。一方で吹付けは、雨だれ汚れが目立ちやすいので定期的な清掃が必要ですが、タイル貼りより建築費が抑えられます。
また、建物の耐震性も重要なチェックポイントです。1981年6月以前の建築物は「旧耐震基準」以降は新耐震基準と呼ばれています。1981年6月以降は建築確認時の条件が厳しくなっているため、新耐震基準の方が地震に強いマンションです。
建物の地震に対する構造には「耐震」「制震」「免震」の3つがあります。耐震は壁や柱を強化して、建物自体の強さで地震に対抗する構造です。制震は建物の内部にダンパーなどを設置して、地震の揺れを吸収することで被害を抑えます。
免震は建物と地面を切り離して、間に積層ゴムやダンパーを設置する構造です。建物の揺れを最も抑えられる構造であるため、高層ビルやタワーマンションなどで採用されています。コストは「耐震<制震<免震」の順に高くなっていき、制震と免震を組み合わせた「免制震」と呼ばれるマンションもあります。
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マンション内の敷地を見て回る際は、公開空地があるかも確認しておきましょう。容積率や高さ制限を緩和するなどの目的で、敷地内に居住者以外も利用できる公開空地を設けているケースがあります。敷地内に空地を設けることにより開放感がありますが、外部の人も入れるため利用マナーやセキュリティの問題が発生することもあるので注意しましょう。
共用部分・管理
マンションを購入する際は、車を持っていなくても「駐車場が機械式か自走式か」を確認しましょう。車を利用する方にとってはもちろん重要ですが、使う予定がない方にとっても維持・修繕に掛かるコストは管理費・修繕積立金に影響します。機械式駐車場は限られた敷地を有効に活用できるため、駐車場の台数を確保できるメリットがあります。ただし雨ざらしになるので劣化しやすく、機械のメンテナンスに費用がかかる点には要注意です。
一方で自走式駐車場はメンテナンス費用が安く利便性も高いですが、駐車台数の確保が難しくなります。ある程度の敷地が確保できるマンションであれば、ショッピングモールのような自走式立体駐車場を採用しているケースもあります。
マンションの住戸数に対するエレベーターの台数も、確認しておくべきポイントです。住戸数に対してエレベーターの台数が少ないと、通勤・通学時間帯などに混んでしまって不便です。100戸に1台であれば許容範囲ですが、50戸に対して1台あるとなお良いでしょう。ただし住戸数に対してエレベーターが多すぎると、維持費の負担が大きくなります。
近年はマンションを利用した民泊が増えているため、管理規約で禁止されているかを確認しておきましょう。特に分譲マンションの所有者にとって、不特定多数の人が共用部を利用する民泊はデメリットが大きいです。利用者のマナーの問題もあるので、マンション購入前に民泊不可になっているかチェックすることをおすすめします。
インターネットの利用料を抑えたい方は、マンション全体の一括契約が入っているかを確認してみてください。マンション全体で1つのインターネット会社と契約すると、スケールメリットにより利用料が安くなるケースが多いです。
一方で、インターネット利用料が管理費に組み込まれているマンションもあるため、自由に契約先を選びたい方にとってはデメリットと言えます。その場合は、特定の会社とインターネット契約を結んでいないマンションを選びましょう。
検討している物件の住戸数を気にする方は少ないと思いますが、マンションの管理費は区分所有者数による頭割りです。そのため、一般的には住戸数の多いほうが管理費が低くなる傾向があります。
ただしフィットネスジムやパーティールームなど共用施設が充実していると維持費が掛かるので、その分管理費や修繕費は上がります。100〜150戸程度で共用施設の少ないマンションが、もっとも管理費が低いケースが多いです。
マンションを購入する際は、ご自身だけでなくマンション全体の資金計画も確認しておきましょう。特に修繕積立金に関しては、売主の意向で修繕費を低く見積もっているケースがあります。その場合は入居後に修繕積立金がアップするので、長期修繕計画を確認しておくことが重要です。中古の場合は、大規模修繕が終了しているかもチェックしてください。大規模修繕の際に資金が足りないと、一時金の徴収が発生する可能性があります。
管理の行き届いた物件を見極めるコツ
「マンションは管理を買え」と良く言われますが、最後に管理の行き届いた物件を見極めるコツについてお話します。マンション管理会社の品質は、管理員次第の要素が大きいです。管理員が「愛想が良くない」「いつも管理事務室にいて出てこない」場合は要注意。管理員はフットワークの軽さが重要です。依頼事項に素早く対応してくれる人であれば安心でしょう。マンションの管理を見るうえで、清掃状況のチェックは欠かせません。管理会社も清掃が最も見られるとわかっているので、ここで手を抜く会社は品質が低いと判断できます。たとえば共用廊下の手すり壁に雨だれ汚れがある場合は、手すりの上をこまめに拭いていないことがわかるでしょう。
ただし、管理費を下げるために清掃の範囲や回数を削っているケースもあります。購入前に「建物管理に関する契約書」や「清掃の仕様書」を見せてもらえるか、営業担当に確認してみましょう。
「マンション内の鉄部にサビがないか」をチェックすることでも管理の品質を判断できます。マンションの設備は雨にさらされるため、鉄部は経年劣化でどうしても錆びます。そのままにしておくと「美観が悪い」とともに強度も落ちるので、錆止め塗装などのメンテナンスをしっかり行っているか確認しましょう。
また海に近いマンションは、塩害で錆の進行が早いケースがあります。そのような環境下のマンションでは、計画的な修繕がより一層重要です。
マンション内を見学する際は、掲示板も見ておきましょう。古い掲示物がないか確認するとともに、議事録が貼ってあれば「管理組合の活動状況」も把握できます。理事会の開催頻度が多く、活発に活動しているマンションは管理が行き届いている傾向があります。
マンションの管理には2つの認定制度があります。マンション管理業協会の「マンション管理適正評価制度」と国土交通省の「マンション管理計画認定制度」の取得状況を確認しましょう。評価を取得していること自体で、管理に対する意識が高いマンションと判断できます。もちろん評価は高いに越したことはないので、各チェック項目までしっかりと見ておきましょう。
まとめ
マンションの共用部分は区分所有者全員の資産であり、住みやすさにも大きな影響があります。マンションの購入を検討する際は、住戸内だけでなく建物や敷地内もじっくり回って確認しましょう。また、新築時はきれいなマンションでも管理が行き届いていなければ急激に劣化します。特に中古マンションを検討している場合は「築年数に対して建物が傷んでないか」「共用廊下にゴミが落ちていたり手すりが汚れていないか」をチェックしてみてください。