そこで今回は「住環境」と「設備・仕様」という2つの視点で、元不動産営業マンがマンション選びでチェックするべきポイントについてお話します。最後に「良い不動産会社を見極めるコツ」もお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
住環境に関するチェックポイント
まず見ていただきたいのは、マンション内での住戸の位置です。玄関からエレベーターや階段が近いと移動には便利ですが、家の前を行き来する人が多いことを気にする方もいるでしょう。反対に、エレベーターが遠いと歩く距離は長くなりますが、往来は少ないため静かな環境で暮らしたい方にはおすすめです。またエレベーター前の住戸は玄関前に壁があるので、雨風の影響を受けづらいことも隠れたメリットです。実際に住んでみるとわかりますが、住戸の位置はゴミの出しやすさにも影響します。多くのマンションではゴミを1階や地下等にあるゴミ置き場まで持っていく必要があります。このときにエレベーターが遠いと、ゴミを運び出すのに苦労するかもしれません。さらに、途中にオートロック等のセキュリティシステムがあるとゴミを持ちながら鍵を取り出す必要があるため、住戸からゴミ置き場までの動線を確認しておくことをおすすめします。ゴミ出しについては「24時間いつでも出せるのか」や、回収の頻度、分別方法などのルールも確認しておきましょう。
続いて重要なチェックポイントは「日当たり」です。住まい選びにおいて日当たりを重視するお客様は多いので、「南向き」が最も人気です。南向きは夏の暑さが気になるという意見もありますが、夏場は日が高いため、日差しが室内にはあまり入ってこないことが多いです。逆に冬は適度に太陽の位置が下がるので、長い時間日差しが入り暖かくなります。南向きは人気があるぶん価格が上がるので、購入資金に余裕があって日当たりを重視する方に選ばれる傾向があります。
西向きは「日照時間を確保したい」という方におすすめです。昼頃から夕方にかけてたっぷり光が入ってきますので、東向きより日照時間が長く感じられます。一方で午後は日差しが強いと感じる方もいるので、カーテンを開け閉めして調整しているケースも多いです。
東向きは朝日が最も入ってくるので「気持ちよく目覚めたい」という方に人気があります。日照時間は西向きと同じですが、寝ている間はカーテンを閉めている方が多いので、体感としては少し短いかもしれませんね。また、冬の午後は日が入らず冷え込みやすい点には注意しましょう。
北向きはイメージどおり冬場は部屋が温まりづらいですが、価格は比較的抑えられているため購入資金に不安がある方の選択肢になります。日当たりも悪いというイメージがあり、確かに直射日光は入ってきませんが、日差しの向きが順光であるため窓の外の景色が明るく、綺麗に見えます。マンションを購入する際に希望するすべての条件を叶えるのは難しいので、日当たりを気にしない方であれば気に入った物件に住みやすいというメリットがあります。
住環境に関するチェックポイントで、最後にお伝えするのは「眺望」です。眺望が良い部屋は資産価値が下がりにくいので、同じ間取りでも下層階と上層階では大きく価格が異なるケースが多いです。眺望が売りのマンションなどでは、条件によっては1つ階が上がると100万円以上価格が上昇することもあります。
ただし、眺望は将来に渡って保証されるものではありません。たとえ高層階に住んでいたとしても、目の前に同じ高さの建物ができると視界がさえぎられてしまいます。マンション購入の際は、眺望は変化する可能性があることを理解しておきましょう。一方で川沿いや公園前のマンションであれば、比較的眺望は変化しづらいです。ただし、川沿いの物件は防災・衛生の面から一般的に好まれない点に注意しましょう。
設備・仕様に関するチェックポイント
部屋に入ると、まず目に入るのはフローリングの色です。マンションのフローリングは、白に近いベージュのような色から濃い茶色まで3〜5色程度のタイプがあります。特徴としてはフローリングが濃い色だとホコリが目立ち、明るい色だと髪の毛が目立ちます。新築分譲マンションで竣工まである程度期間がある場合、フローリングの色を選べるケースもあるので物件の担当者に聞いてみましょう。次にマンション選びにおいて見るべきポイントは「収納」です。お客様と話していると、収納より居室の広さを重視する方が多い印象があります。しかし実際に住んでみて収納が足りなくなると、後から室内にタンスなどを置くことになるので、結局居住スペースが狭くなってしまいます。部屋の収納力を把握するため、クローゼットを見るときは、奥行きや幅などをしっかりと確認しましょう。物件によっては、後から仕切りを増やしたり減らしたり出来るタイプのクローゼットもあります。
加えて、日常的に使うものとして、キッチンの高さも確認しておきましょう。キッチンの高さが合わないと、腰や背中を痛めることもあるため注意が必要です。標準的な高さは85cmで、ご自身の肘よりも10〜15cmほど作業場所が低くなっていると使い勝手が良いので、内見やモデルルーム見学のときに実際にキッチンに立ってみて確認しましょう。
その他の設備では、洗面台の水栓も隠れたチェックポイントです。水栓が固定されているタイプより、吐水口が引き出せるホース式の方がボウルを掃除しやすいという特長があります。内見やモデルルーム見学の際に洗面台周りを確認していても、見落としがちなポイントです。新築分譲マンションではオプションで変更できるケースがあるので、確認してみましょう。
また、近年は地震対策で家具を固定する方が増えています。家具の転倒防止策としては、ワイヤーやビスで家具と壁を固定する方法が最も安全です。ただし一般的な石膏(せっこう)ボードでは家具の重みを支えきれない可能性があるので、壁裏に下地が入っていると安心です。
下地の入っている位置は、マンションの重要事項説明書などに書かれていることが多いので確認してみましょう。新築分譲マンションの場合はオプションで追加できるケースがあるので、下地の有無も含めて担当者に聞いてみることをおすすめします。
バリアフリー対策として、床の段差についても確認しておきましょう。最近のマンションは扉や玄関の段差が少なく、子どもや高齢者でも安心して暮らせる設計になっています。一方で、中古マンションの購入を検討している場合は注意が必要です。若い方が住むのであれば大きな問題にはなりませんが、長く住む予定であればライフスタイルの変化も想定しておきましょう。併せて、玄関やお風呂に手すりがあるかなども確認できると良いでしょう。
良い不動産会社を見極めるコツ
最後に元不動産営業マンから見た「良い不動産会社を見極めるコツ」についてお話します。前提として新築分譲マンションを検討している場合は、希望する物件のモデルルームを訪ねることになります。中古の場合は同じ物件を複数の不動産仲介会社が取り扱っている場合も多いので、不動産会社選びがよりいっそう重要です。まず最初に見るべきポイントは「営業担当者がしっかりと話を聞いてくれるか」です。担当者が営業トークに終始して、こちらの話を聞いてくれない場合は注意しましょう。そのような営業担当者は「売りたい」気持ちが強いか、経験不足で余裕がないためマニュアルトークしかできない可能性が高いです。お客様の意図を汲み取って、ときには「おすすめしない」という決断のできる人が担当についてくれるのであれば、良い不動産会社であると言えます。
営業担当者が「物件のデメリットを正直に伝えてくれるか」も、良い不動産会社であるかを見極める際に重要です。中にはデメリットを隠したり、ポジティブに言い換えたりする営業担当者もいます。
たとえば南向きを希望しているものの予算が足りない方に「西向きは午後も日が入ってくるので人気がありますよ」などと伝えたりするケースがあります。
西向きであることは一概にはデメリットとは言えませんが、日が入るとはいえ西日が苦手な場合もあるでしょう。営業担当者の説明に「納得できない」と感じることが続くようであれば、不動産会社に担当変更を要望することも検討しましょう。
また、中古物件探しの場合は担当者が自社の取扱物件以外を紹介してくれるかどうかも重要です。仲介会社の場合は他社が扱っている物件でも紹介できるので、お客様にとって最良の物件を紹介しようとする不動産会社は信頼できます。
「自社が媒介契約を結んでいる部屋ばかり紹介する」「中古の相談に来ているのに自社の新築物件を勧めてくる」場合などは要注意です。お客様の利益より、企業の売上や仲介手数料を優先している可能性があります。
最後にお伝えしたいのは「無理な資金計画を勧める会社には注意」ということです。「ローンの審査に通る」ことと「毎月無理なく支払える」ことはまったく別の話です。営業担当者がマンションを売ることを優先するあまり、お客様の生活を考えずにローンの審査を無理に通そうとするケースがあります。
お客様の立場でも「マンションを購入したい」という思いが強いので、支払い計画を綿密に立てずに多額のローンを組んでしまうことがあります。ローンの支払いは長いケースで30年以上続くので、仕事やライフスタイルの変化も想定した上で適切にアドバイスしてくれる不動産会社を選びましょう。
まとめ
マンション購入の際には「ご自身がこだわりたいポイント」を確認してから物件を見に行くのがおすすめです。すべての希望を満たすマンションを見つけるのは難しいので、チェックポイントを洗い出した上で優先順位をつけておきましょう。また信頼できる不動産会社を選ぶことも、納得感のあるマンション購入には重要な要素です。営業担当者との相性もありますので、まずは気になる物件を取り扱っている不動産会社に問い合わせて、話を聞いてみることから始めてみましょう。