Hygge

ミニマムで美意識のある、ストレスフリーな暮らしを。
ヒュッゲなライフスタイルをご紹介!

「Hygge(ヒュッゲ)」と呼ばれる心豊かな“巣ごもり”生活を営む北欧の人々。そのライフスタイルは、“おうち時間”をより豊かにするヒントや工夫がたくさん詰まっています。北欧製品の輸入や文化発信を手掛け、ヒュッゲの文化を日本にいち早く紹介した芳子ビューエルさんに、お話をうかがいました。後編では自分時間の楽しみ方などヒュッゲなライフスタイルを中心にご紹介します。

ヒュッゲな空間づくりをご紹介している前編はこちら

北欧流ワークライフデザイナー
芳子ビューエルさん

株式会社アルトスター代表取締役。北欧の家具や照明器具、雑貨などの輸入販売のパイオニアで、北欧の文化・ライフスタイルを発信。JETRO(日本貿易振興機構)のライフスタイル専門家として、北米、北欧/ヨーロッパ、オセアニアを担当。その後、世界的に有名なデンマークブランド「menu」「DYKON」など、北欧の大手メーカー7社の商品を取り扱い、海外の上質なアイテムを扱うインテリアショップ「ALTO(アルト)」を群馬県高崎市で運営。著書に『世界一幸せな国、北欧デンマークのシンプルで豊かな暮らし』『fika(フィーカ)世界一幸せな北欧の休み方・働き方』などがある。

芳子ビューエルさんの公式サイトはこちら


ヒュッゲなライフスタイルとは?

シンプルでミニマム、
美意識のある暮らし

デンマークの住宅事情は、日本の都心部と似ていて住宅の広さも同じくらい。住空間が限られ、物価も高いため、デンマークの人々はほとんど衝動買いをしませんし、料理や掃除の道具などは、とにかく必要最小限しか持ちません。室内に物をたくさん置かず、いつもスッキリと片付けられています。

デンマークの友人は「たくさんの物があると、整理整頓や物を探すのに時間がかかってしまうし、片付けなきゃって考えること自体がストレスになる」と話していました。確かに、物が少ないほうがストレスなく心地よく暮らせるのも一理ありますね。

大切なもの、好きなものにこだわる

デンマークの人々は、シンプルなものを好み、とても質素。多くの物を所有しませんが、自身の人生で大切なものをしっかり考えて選び抜き、大切な物は大事にずっと持ち続けます。余分な物を抱え込むことでストレスを感じたり、他人の評価や意見に影響されるのを嫌がります。

その代わり、自分が好きなものにはとてもこだわって、手間暇かけることをいとわない。この価値観は、日本でもミニマリストと呼ばれる方や特に若い世代の方と似ているのではないでしょうか。


ミニマムなデンマークのキッチンツール

限られた住空間の限られた収納スペースに収まる量しか物を持たないデンマークの人々。持てる量が限られるからこそ、機能性や実用性の高い物を厳選して使っています。デンマークの友人がおすすめしたくてプレゼントしてくれたのが、写真のキッチンツールです。手前の泡立て器も奥の鍋敷きも、収納するときは1本の棒状になるので、とてもコンパクト。使い勝手がよくて、愛用しています。デンマークの一般的な家庭では、キッチンは基本的な物しかなく、こうしたコンパクトに収納できる機能やデザインも重視されていますね。


家事をできるだけストレスフリーに

デンマークの家がスッキリと片付いているのは、物が少ないからだけではありません。“使ったら、もとの場所に戻す”という習慣が子どもの頃から身についていて、キッチンやリビング、ダイニングのあらゆる物に、置く場所や収納する所が決められ、しっかりと片付けられているのです。

さらに、 “ひとつ物を買ったら、ひとつ物を捨てる”というルールを徹底しているから収納場所が限られていても、家の中に物があふれることもありません。物が多いと毎日の片付けも大変ですから、物を減らして片付ける習慣を家族も身につけられたら、スッキリとした空間がキープでき、片付けのストレスを軽減することができますね。

夫婦の家事分担は5:5

共働きが多いデンマークの家庭では、夫婦の家事分担は5:5です。子どもが生まれても、結婚しないまま数年にわたって一緒に暮らすカップルがとても多く、何年か経ってお互いがうまくやっていけそうだと感じたら、結婚するようです。“共同で生活している”という意識があるからこそ、互いに協力し合うのだと思います。家事も男だから女だからという決め方ではなく、一人の人としてやりたいこと、やってほしいことを話し合って決めています。

日本と大きく違うのは、デンマークでは残業がなく仕事が終わればまっすぐ家に帰るため、男女に関係なく家事をやりやすい環境といえます。男性が産休も育休もとることができ、女性が働いてキャリアを積みやすい国ですね。

家事がシェアしやすい状況をつくる

家族が同じ空間で過ごすことが多いのもデンマークの家庭ならでは。たとえば、家の中に大きなテーブルがあって、子どもが宿題をやる横でママがジャガイモの皮をむき、パパは仕事をしている。そこでママがパパに「あなた、これちょっと一緒にお願い」と自然な感じで手伝ってもらう。こうした光景が当たり前になっています。ママ一人だけがキッチンにいるのは少ないですね。子どもたちもそんな光景を見て育っているから、野菜や果物の皮をむいたり、一緒にお手伝いをするようになります。

一日中ずっと一緒に過ごすのは難しいですが、平日は夕方から夜にかけてとか、休日の昼とか、家族みんなが一緒に過ごせる時間とスペースがあれば、コミュニケーションの活性化になり、自然と家事もシェアしやすくなると思います。


ヒュッゲな時間の楽しみ方

自分の好きな場所をつくる

できるだけ物を持たずにスッキリと暮らす、と言われても、お気に入りの小物や雑貨があれば飾りたくなりますね。私は、洗面台の脇に、お気に入りの物を飾れるコーナーを作りました。自分の好きな場所がありながら、室内もスッキリ。うまく両立することができています。

デンマークの人々も、みんな自分のスペースを持っています。前編でマイチェアをご紹介しましたが、このほかにもリビングに自分の作品を飾ったり、庭やボートだったり。自分にとって心地よい居場所や好きな場所をつくるのは、とても大切なことですね。

癒やされるお気に入りを見つける

ヒュッゲな暮らしを叶えるために、場所や空間だけではなく、心が癒やされるお気に入りの過ごし方やアイテムも見つけたいですね。前編でデンマークの人は、キャンドルをこよなく愛しているとご紹介しました。

キャンドルの中でとてもよく使われているのが、写真の「ティ・キャンドル」です。耐熱ガラスに入れた紅茶やハーブティーをティ・キャンドルで温めながら、ゆったり味わえます。お湯が徐々に色づいたり、キャンドルの小さな炎がガラスの中で美しく反射したり、とても素敵な時間を演出してくれるアイテムです。北欧インテリア商品を初めて輸入するとき、まず最初に選んだのがこのティ・キャンドルと耐熱ガラスだったくらい、とても気に入っています。

巣ごもりを家族で楽しむ

寒い冬に、こたつに入って家族団らんの時間を過ごす。そんな記憶をお持ちの方も多いのではないでしょうか。日本でおなじみだった団らんも、ヒュッゲな時間です。家族みんなで一緒にゲームを楽しんだり、同じ時間と空間、体験を共有することがヒュッゲといえます。デンマークの家庭でも、なにか特別なことをするわけではなく、ソファでブランケットにくるまり、テレビを見ながら家族みんなで会話するだけ。自然体で、ほっこりした時間を一緒に過ごすことがヒュッゲだと考えているのです。

家の中で家族みんなで楽しめるものとして、ビスケットやホットケーキ、クリームチーズやジャムなどを使ってお菓子の家を作ってみては。簡単なお弁当を作って家の中にスローケットを広げて、ピクニックを楽しんでみるのもいいかもしれないですね。


デンマーク流のヒュッゲなおもてなし

飾ることなく自然体、
思いやりを感じる

デンマーク人が飾り立てず素のまま、自然体のままでいるのは、おもてなしの時間も同じです。日本人が思うような大げさなことは何もありません。ただ、思いやりの気持ちをとても感じます。たとえば、寒い日に自宅を訪ねてきた人がいたら、コーヒーを出しますよね。ドリップしたほうが美味しいけど、できなくてインスタントになってしまうから、せめてカップだけでも温めてあげる。本当にちょっとしたことですが、寒い日に来てくれたんだから、温めてあげたいという思いやりですね。デンマークの人はこうした思いやりに富んでいて、まさにヒュッゲの精神の表れだと思います。

体験を一緒に、招く側も楽しむ

フランスやイギリスでホームパーティーとなれば、テーブルにクロスが敷かれ、銀の食器が並び、きれいにテーブルセッティングされています。でも、デンマークでは、パーティー用の食器などを収納できるスペースの余裕がないため、美味しい料理にはこだわっても、テーブルセッティングは簡素です。

形式にはとらわれないですが、大切にしているのが一緒に体験すること。たとえば、私がこれまで参加したのは、リンゴジュースを作るというもの。リンゴを収穫して運んで洗って搾って、という作業をやりながらおしゃべりを楽しみます。デンマーク流のおもてなしは、一緒に料理を作り、一緒に片付けて、招く側も招かれた側も気負わず、心地いい時間を共にすることなのです。

テーブルに彩りを添える普段遣いのアイテムを

パーティーのために特別な物を用意して飾り立てることはしなくても、普段からお気に入りの食器やグラスを使っていれば、そのままパーティーでも使うことができますね。写真は、 HAYの耐熱カップです。カラフルながら落ち着いた色味で、テーブルにほどよく彩りを添えてくれます。耐熱性・耐久性が高いボロシリケイトガラス製で、とても丈夫。ホットにもアイスにも、季節を問わず使える万能カップです。


心地よい
“おうち時間”のために

2回にわたってご紹介した、北欧の「ヒュッゲ」に学ぶ心豊かな暮らし。自分や家族の人生にとって大切なものを大事にするシンプルな美意識、素朴ながらも思いやりにあふれたおもてなしなど、日本人にとってなじみのある話も多く、無理せず気負わず、自分らしく取り入れてみてはいかがでしょうか。「家にいなければならない」のではなく、「家にいることが心地いい」。 そう思える暮らしの一助に、ヒュッゲはきっとなってくれるはずです。


ヒュッゲをコンセプトにしたショップ

アルトスターショップ

ビューエルさんが営むインテリアショップ。2020年4月に現在地に移転オープンしました。店内にはデンマークや北欧だけにとどまらず、日本国内の職人が作ったアイテムなど、ヒュッゲをコンセプトにしたインテリアや雑貨が並んでいます。ワインの揺りかごといわれる希少なジョージアワインも充実。

群馬県高崎市上並榎町258-2
Tel 027-388-1598

[時]10:00〜18:00
[休]日曜

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