背伸びをせず、必要なものに囲まれてラクに過ごせるインテリアのコツについて、クラシング代表でインテリアブロガーでもある瀧本さんにお伺いした前編。後編では瀧本さんのご自宅で実践されている整理方法やインテリアコーディネート術を、たっぷりお届けします。ラクな暮らしを叶えるための、すてきなアイデアが満載です。
[プロフィール]
アンティーク雑貨やプチプラグッズのリメイクアイデアで一躍人気ブロガーに。書籍を4冊出版し100冊以上の雑誌に掲載されるなど、大人気の暮らしコーディネーターです。愛媛県在住。整理収納コンサルタント、整理収納教育士、ルームスタイリスト1級などの資格を持ち、暮らしにまつわる情報をブログやSNSで日々発信しています。
ブログ開設当初から、おうち全体を飾るインテリアを楽しんでいた瀧本さんでしたが、2016年の熊本地震をきっかけにシンプルでナチュラルなインテリアへと変化。頑張りすぎず、安全で快適な暮らしを提案しています。
じつは3人のお孫さんがいらっしゃる瀧本さん。娘さんやお孫さんたちが遊びに来たときのために子ども部屋を設け、お孫さんが自主的に片付けられるような工夫を施しています。
もちろん小さなお子様だけでなく大人の2人暮らしもラクに過ごせるよう、必要なものが何であるかを見極めつつ日頃からものの取捨選択をして快適さをキープ。すっきり整った暮らしを実現しています。
片付けが自主的にできる子に育てば、その子自身も将来ラクに暮らせるはず。そう考えた瀧本さんは、遊びながら片付けが学べる「片づけ遊び指導士」の資格を取得し実践しています。例えば、収納ボックスには番号を振って「1番にしまおうね」と教えてあげることで、遊び感覚でおもちゃや絵本を片付けられます。今ではお孫さん自ら「このおもちゃは3番だよね?」と声が掛かることも。
すぐに取り出したいお気に入りの絵本やおもちゃは、オープンな収納ボックスへ。複数個並べていても、ボックスの色・形を揃えればまとまって見えます。
以前はベッドとして活用していた小上がりは、お孫さんたちのためにベンチへと活用方法をチェンジ。引き出しの中は娘さんやお孫さんが泊まりに来たとき用の寝具を収納しています。
気に入って買ったけれどなかなか使わないものが結構あるはず。手放そうか残そうかと迷ってしまい、結局使わないままその場所に設置され続ける、なんてことも。
そんなとき瀧本さんは、「ものの取捨選択に迷ったら、一旦それを見えない場所に移動してしばらく置いておきます。近くにない状態で過ごしてみて、なくても違和感がなければ今の自分には必要ないもの。リサイクルに出したり人に譲ったりと、次の行動ができます」。
手放した気分になって“ない状態”で暮らしてみる。やっぱり必要だと思えたら残しておく。ものを増やさないコツはとっても簡単な行動でした。
【手放したことで見え方・考え方が変わったアイデアの一例】
【洗面室の収納】
何でも入れていい多目的ボックスは、とっても便利な反面ぐちゃぐちゃになりがちで、片付けにくさが増してしまいます。「多目的ボックスは作らない、という選択肢もありだと思います」と瀧本さん。ものには必ず収納する居場所をつくり、入りきらない場合は手放すことも視野に入れてみて。たくさんあると便利なタオルも、必要な枚数だけに減らしてみれば収納スペースがすっきりします。
自宅のインテリアは一緒に暮らす人の好みや気持ちも汲み取りつつ、愉しみたいものです。瀧本さんのご自宅も、リビングやダイニングなど家族が集まる場所はかわいらしいインテリアになりすぎないよう注意しているのだそう。「インテリアを変えたら、『これどう?』と家族に聞くようにしています。基本的にはこだわりのない夫ですが、それでも気に入ったときには『いいね!』とうれしそうなので、やっぱり会話することって重要だなと感じます」。
瀧本さんにとって、今の自分にぴったりだと感じるライフスタイルは「安全であること」と「家事がラクにできること」。たっぷりと余白をとったインテリアは、万が一のことが起こったときの動線を妨げない上、広々とした空間は掃除がしやすいというメリットもあります。また、シンプルなインテリアは手をかけなくてもきちんとまとまって見える、うれしい魅力も。
ここでは瀧本さん流の安全に配慮したシンプルなインテリア術と、家事をラクにする収納術をご紹介します。
キッチン収納は、使用頻度の低いものを下に、高いものを上にして、取り出しやすさをしっかりと考慮。その上で引き出しを開けたとき、どこに何があるかがすぐに見えるよう、仕切りを設けて仕分けし、ネーミングシールも貼り付けています。「こうすれば、無意識のうちに手が動いてさっと収納できるようになります」と瀧本さん。収納するアイテムの色を揃えれば、見た目もすっきりとして気持ちいいです。
食材は冷凍できるものはすべて冷凍室へ。その際、重ねて置かずにそれぞれの食材が見えるように仕切りを活用して収納しています。食材が見えやすいように収納しておくと長時間あけた状態で食材を探す手間も減り、エコにもつながります。
キッチンカウンターの上には何も置かず、すっきりと保つように。食器洗い洗剤など、何かひとつでも置くと「置いていい場所」になってしまい、どんどんものが増えて片付けにくくなるそう。
日本各地で起こる災害や中四国に大きな被害をもたらした2018年の西日本豪雨をきっかけに、インテリアの安全性や非常時の備えに対しても改めて見直したという瀧本さん。ガラスや陶器などの割れるインテリアは極力減らし、玄関を入ったすぐのスペースには、災害時の備蓄用キャビネットを設置。中には水や非常食、カセットガスボンベなどが常備されています。キャビネットの中は仕切りを活用して、誰が見ても分かりやすいよう収納されているところもポイントです。
掃除道具やティッシュなどの日用品ストックは、すぐに使うものだからリビングに置いておきたいけれど、パッケージの存在感が気になる。そういったアイテムは大きめの収納ボックスに入れて隠しています。重いものや大きいものを収納するには、布製のボックスが軽くて便利。部屋の雰囲気に合わせてボックスの色味を選ぶことも、キレイに見えるポイントです。
クローゼットの中にはシンプルなスチールラックを入れて、細々したものを収納。「引き出しを仕切りなしで使うことって、ほとんどないかも。仕切りを使うことで、引き出しの中でアイテムがバラバラにならず、キレイな状態が保てますよ」とのこと。折り返して高さを調整できる不織布の仕切りケースは、瀧本さんのマストアイテムです。
かつてはプチプラアイテムをたっぷり揃え、すてきに飾っていた瀧本さん。ショップ巡りも欠かせず、両手にプチプラアイテムを抱えて帰宅することも日常茶飯事でした。でも今は必要最低限のものだけを選ぶスタイルに。「このリモコンホルダーもリーズナブルなものですが、色味も形もソファにぴったりで重宝しています。浮かせる収納は掃除もラクなのでおすすめですよ」とのこと。
環境が変わったり価値観・考え方に変化が訪れたりと、さまざまな要因で好きなインテリアの傾向も変わるものです。「こうじゃないといけない」と固執せず、変わりゆく自分を楽しみながらインテリアもフレキシブルに変化させることが、“やさしい暮らし”のベースになりそう。
飾るインテリアから手放すインテリアへと変わっていった瀧本さんのご自宅は、キレイでありながらなんともラクで心地よく過ごせる空間でした。自分にとって何が大切なのかを改めて考えれば、心と体が解放されるやさしい暮らしのヒントが見つかりそうです。