分譲マンションを購入すると、毎月「管理費」や「修繕積立金」の支払いが必要になります。毎月のローンの返済金額ばかりに目をとられていると、購入後に想定していた固定支出よりも多くの支払いが発生し、困ってしまうことがあるため注意しましょう。
今回は、マンションの管理費と修繕積立金の違いや相場、注意すべきポイントなどをご紹介します。マンション購入後に慌てないためにも、管理費と修繕積立金について理解しておきましょう。
マンションを購入すると管理費と修繕積立金が必要
共用部分のエントランスやエレベーターなどの設備を維持するには、日々の管理やメンテナンスが欠かせません。管理費や修繕積立金は、安全で快適な暮らしを維持するために徴収される費用です。
管理費や修繕積立金の使い道をそれぞれ詳しくご紹介します。
快適な住環境を維持するための管理費
管理費は、エントランスやエレベーター、階段や廊下などの共用部分の維持や管理にあてられるお金です。主に次のような項目に使用されます。・管理人の人件費
・共用部分(エントランス、廊下、階段、エレベーターなど)で使われる水道光熱費
・清掃に関する掃除用具の購入費用や人件費
・電球などの消耗品の購入費用
・防犯カメラやAEDのレンタル料
・管理会社に支払う委託費
・管理組合の運営費
・火災保険や地震保険への保険料 など
長期間資産価値を維持するための修繕積立金
修繕積立金は、一般的に12年程度で一度おこなわれる大規模修繕に備えて徴収されるお金です。大規模修繕工事は、住民が安心してマンションで生活することと、マンションの資産価値を維持するために実施されます。一般的に、大規模修繕工事には多額の費用が必要です。工事を始めるタイミングで一度に費用を徴収すると、住民に大きな負担がかかり、支払いができない人がでる可能性もあります。
修繕計画にもとづいて確実に工事をおこなうために、積立金として住民から一定額を毎月徴収して確保するのです。
新築マンションで必要な管理一時金と修繕一時金
新築マンションを購入する際には、月々支払う管理費や修繕積立金だけではなく「管理一時金」や「修繕一時金」と呼ばれる費用も徴収される場合があります。新築マンション特有のもので、購入時のみ徴収される費用です。新築マンションの場合、完成した時点では人件費や備品を購入するための資金がありません。管理一時金は、マンションの管理をスムーズに始めるため、初回の管理費が集まる前に必要な物品を購入する費用にあてられます。金額はマンションによって異なりますが、数万円程度です。管理一時金を利用して、共用の清掃道具や備品収納の物置の購入、火災保険の加入などをおこないます。
修繕一時金は、まだ修繕積立金が十分に貯まっていない期間に修繕が必要になった場合や、大規模修繕工事の際に費用が不足した場合に使われます。費用は一般的に数十万円程度ですが、100万円を超えることもあるため、余裕をもって準備しておきましょう。物件によっては、修繕一時金をマンションの購入費用に含めて住宅ローンでカバーできる場合もあります。
管理費の相場と費用の決まり方
マンションの管理費は、基本的にマンションの規模や専有部分の広さによって費用が異なります。マンションを選ぶ際には、管理費も事前に確認しておきましょう。
マンション管理費の相場について詳しくご紹介します。
管理費の一般的な相場
国土交通省が発表した「平成30年度マンション総合調査結果」によると、マンション全体の管理費の総額平均は毎月およそ15,956円/戸です。(駐車場使用料などからの充当額を含む)[注1]マンションの戸数や規模、契約する管理会社によっても変わってきます。相場から大きく離れていないか、事前に確認してみましょう。ただし、実際に支払う管理費の金額は、所有する住戸の専有面積によって変動するため注意が必要です。。マンションの共有部分は、所有面積の割合で按分されるためです。
大規模マンションほど管理費は割安
マンションの管理に必要な費用は、規模や戸数に連動するものばかりではありません。規模によらず基本的にかかる部分もあります。管理費は入居戸数全体で負担するため、一般的に戸数が多いほど1戸あたりの負担金額は安くなります。
タワーマンションの場合は注意
戸数が多く大規模なマンションでも、タワーマンションの場合は管理費が高くなることもあります。タワーマンションは、一般的なマンションに比べて共用設備やサービスが充実しているためです。また、高層階まで敷設されたエレベーターのメンテナンス費用も割高となります。さらに、フィットネスジムやコンシェルジュ会議室、キッズルームなど豪華な設備がタワーマンションの特徴ですが、その分管理費も高く設定されています。
管理費で注意すべきポイント
安全で快適なマンション生活を維持するために、管理費は欠かせない費用です。できるだけ毎月の支払いを減らしたいからといって、単純に管理費が安いことだけを条件に物件を選ぶと、清掃の頻度が少ない場合や、管理が行き届かず不便な思いをすることもあるので注意しましょう。
マンションの管理費について、注意すべきポイントを詳しくご紹介します。
管理費は滞納しないようにする
管理費を滞納すると、管理組合の運営に支障をきたすこともあるため注意しなければなりません。管理費や修繕積立金の支払いがされていない人には、管理会社や管理組合から督促の連絡がきます。万が一滞納していることをほかの入居者に知られてしまうと、不公平感が生まれ住みにくくなるおそれもあるので、管理費の滞納はできるだけ早く解消しておきましょう。
また、悪質な滞納の場合は、訴訟や差し押さえなどの法的措置につながりかねません。せっかく購入したマンションに住み続けるためにも、管理費は必ず期限までに支払いましょう。
管理費は安ければいいわけではない
管理費の安いマンションに住めば毎月の支出を減らせますが、管理費は安ければよいわけではありません。管理費が極端に安いマンションでは、十分なメンテナンスがおこなわれず、快適な住環境が確保できないリスクもあります。「マンションは管理を買え」といわれるほど、管理状態は資産価値を維持するうえで重要なポイントです。マンションを購入する際は、管理費の金額だけではなく、管理内容も十分に検討しましょう。
管理費の妥当性をチェックする
購入後のマンション管理の意思決定は、住民で構成する管理組合でおこないます。しかし、マンションの入居者は専門家ではありません。管理会社への委託費用や内容が十分に検討されていないこともあります。また、新築時に決定した委託内容が、現実にそぐわない内容になっているケースもあるので、定期的な確認が必要です。管理会社への支払い金額が内容にあっているか、必要のない項目に費用が支払われていないかを中心に、管理費の妥当性をチェックしましょう。
管理費は将来値上がりをすることもある
管理費や修繕積立金は、将来値上がりすることも想定しておきましょう。長く住んでいると、マンションの経年劣化によって必要な修繕費が増える場合があります。また、消費税の増税や社会情勢の影響で、管理費や修繕積立金が値上がりするかもしれません。購入時に売主から提示される「長期修繕計画書(案)」を読み込んで、修繕積立金の推移の見込みなどを事前にしっかりと確認しておきましょう。
さらに、数年単位で修繕積立金を増額する「段階増額積立方式」を採用しているマンションもあります。
マンション購入時は毎月の管理費も資金計画にいれておく
マンション購入時の資金計画を立てる際には、管理費や修繕積立金も盛り込んでおきましょう。マンションのローン返済額は現在の家賃とそれほど変わらなくても、管理費や修繕積立金が高額な物件の場合は、毎月の支出が大きくふくらんでしまいます。管理費は物件によって異なるため、マンション選びの段階から確認しておくことが大切です。ただし、管理費が安いからといってお得なマンションとは限りません。十分な管理や修繕がされていないマンションは、資産価値が下がってしまうおそれもあります。
快適な住環境の維持に欠かせない管理費。無理なく支払える、妥当な管理費が設定されているマンションをぜひ見つけてください。
[注1]https://www.mlit.go.jp/common/001287412.pdf