マンションの共用部分と専有部分の違いをはっきりと説明できる方は、意外にも少ないのではないでしょうか。
この記事では共用部分と専有部分の違いや、共用部分の範囲、管理費用についてやマナーについて紹介します。
共用部分と専有部分は区分所有法により定められている
建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)では、共用部分と専有部分は次のように定められています。[注]- この法律において「専有部分」とは、区分所有権の目的たる建物の部分をいう。
- この法律において「共用部分」とは、専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物をいう。
[注]e-Gov法令検索|建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000069_20150801_000000000000000)
次の項目では、共用部分と専有部分について、それぞれ分かりやすく説明します。
共用部分は専有部分以外のこと
共用部分とは、専有部分以外の場所のことです。非常階段やエレベーター、廊下やエントランスなどを指して言います。
詳しくは後述しますが、バルコニーやポーチ、窓も共用部分です。
補足として、不動産用語では住人たちのことを「区分所有者」といいます。
さらに区分所有者がもっている部屋のことを「区分所有物」とよびます。
共用部分には法定共用部分と規約共用部分がある
共用部分は、大きく分けて2つの種類があります。1つめは区分所有法によって定められている「法定共用部分」で、2つめはマンションの規約で決められている「規約共用部分」です。
法定共用部分は、自宅からマンションのエントランスまでをつなぐ廊下や階段やエレベーター、パイプスペース、建物の躯体部分をいいます。
一方で規約共用部分は、管理組合の規約によって共用すると決められた場所のことで、駐車場や管理人室、専用の庭などが代表的な例です。
共用部分を変更するには総会で3/4以上の賛成意見が必要
区分所有法第十七条では、共用部分の変更は次のように定められています。[注][注]e-Gov法令検索|建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000069_20150801_000000000000000)
『第十七条 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
2 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。』
たとえば分譲マンションの一室を購入し、換気のために壁に穴を空け、配管を通したとします。
配管や外壁は法定共用部分で定められているため、区分所有法にある通り、総会で3/4以上の賛成意見を集めてからでなければ変更できません。
ここでいう総会とは、管理組合総会のことです。
万が一、この管理組合に相談なく勝手に工事を進めてしまうと、マンション全体の構造にトラブルが起こる可能性があります。
共用部分のものを撤去したり、変更したりする場合には、必ず管理組合に相談しましょう。
相談しても許可が得られない場合は、当然ですがこれらを行うことはできません。
専有部分は部屋内のこと
専有部分とは、単独で所有している部屋内のことをいいます。
いわゆる、コンクリートの壁や天井などで囲まれた内側部分のことです。
専有部分であれば、室内のドアを変えたり、壁紙を変えたりといったことが可能です。
専有部分と専用使用部分の区別
バルコニーやポーチ、窓などは、その部屋に住む人しか使いません。そのような場所のことを「専用使用部分」といいます。
住人が専用に使用する部分なので、専有部分だと思われがちですが、じつは共用部分です。
たとえば分譲マンションの一室を購入し、窓ガラスを遮光できるタイプに変えたいとします。
しかし窓ガラスはマンションの共用部分にあたるため、たとえマンションの一室を購入していたとしても、勝手に変えてはいけないということになります。
そのため、管理組合に確認し、許可をもらってからでないといけません。
バルコニーやポーチでのガーデニング行為を禁止しているところもあります。
専用使用部分で禁止されていることや、許可されていることは、マンションの規約によって異なります。
不安があれば、契約時にもらった規約を確認しましょう。
フィットネスルームやラウンジといった共用部分があるマンションもある
近年、ライブラリーや倉庫といった、利便性の高い共用部分が増えています。
以下ではその一例をご紹介します。
- フィットネスルーム
- ゲストルーム
- レストラン
- ラウンジ
共用部分の管理費用は住人が捻出する
先ほど紹介した共用部分にあたる設備は、マンションの住人たちが費用を出し合って維持します。ローン完済後も毎月管理費と修繕積立金を払っていかなければいけません。
修繕に関しては、長期修繕計画に沿って、数年ごとに金額が上がることも考えられます。
長期修繕計画とは、マンションが住みよい空間であるために、定期的に修繕する計画のことをいいます。
分譲マンションを購入する際には、毎月かかる管理費や修繕積立費のことを考えた支払い計画を立てることが大切です。
共用部分のものを破損した場合の費用は破損した本人が負担する
共用部分のものを破損してしまった場合は、故意かどうかにかかわらず費用を負担しなくてはいけません。このような場合、個人賠償責任保険が使える可能性があります。
マンションの管理組合が加入していないか、クレジットカードに付帯されていないかを確認しましょう。
専用使用部分の破損はケースバイケース
専用部分(部屋内)の破損や汚れに関しては、基本的にはそこに住んでいる人が修理し、費用を負担します。ただし専用使用部分であるバルコニーや、窓ガラスなどは、共用部分であるため場合によっては管理組合が修理をしたり、費用を負担したりすることがあります。
専用使用部分が破損してしまった際は、自己判断で直したりせず、まずは管理会社に相談しましょう。
マンション共用部分ではマナーを守りましょう
マンション共用部分は、すべての住人のものです。
すべての住人がのものなので、決められていることを守りましょう。
とくに専用部分と勘違いしてしまいがちなバルコニーやポーチの使い方には注意が必要です。
特にバルコニーの避難はしごや避難壁の近くにものを置くことは消防法に違反します。
いざというとき、隣人の命をおびやかすことがないよう、普段から整理しておきましょう。
分譲マンションを購入するなら共用部分と専有部分の違いを押さえておこう
共用部分には大きく分けて3種類あります。
まず法定共用部分は、区分所有法で決められた共用部分のことをいいます。
次に規約共用部分とは、マンションの規約などで決められた部分のことです。
また、専用使用部分は、ベランダやバルコニーといった住人が専用で使用する共用部分のことをいいます。
それぞれ共用部分であるため、勝手な判断で工事をしたり、破損した部分を修理したりしないよう気をつけてください。
近ごろのマンションには、フィットネスルームやラウンジといった施設があります。
ラウンジでは日本庭園や夜景が眺められたり、グランドピアノが設置されているマンションもあります。
共用部分は住人からの管理費や修繕積立金で維持されるものです。
分譲マンションを購入するときは、これから先も維持費を払っていけるのかを念頭においておきましょう。
マンションの共用部分は、同じ建物に住む全員のものです。
私物を置かないといったマナーを守りましょう。