IHコンロとガスコンロのどちらかを選ぶうえで大切なことは、どんな使い方をするか、何を重視するかです。目的にあった最適な調理器具を選ぶために、それぞれの特徴をしっかりと把握しておきましょう。
この記事では、IHコンロとガスコンロを徹底比較し、メリット・デメリットを詳しく紹介します。光熱費や交換費用の違いについても解説するので、1つのポイントだけではなく総合的に判断してください。
IHコンロのメリット
IHとは「Induction Heating」の略で、日本語では「電磁誘導加熱」と呼ばれる新しい技術を使用した調理家電がIHコンロです。電磁誘導加熱とは、電流を流した「コイル」から発生する「磁力線」が、ヒーター面(トッププレート)に密着した鍋を通る際に「うず電流」となり、鍋そのものを発熱させるしくみです。
IHコンロのメリットを紹介します。
火を使わないので安心安全
IHコンロを使用する最大のメリットは、安全性が非常に高い点です。ガスコンロのように火を使用せず、電気の力で加熱します。火を使わないため、火災の発生リスクがほとんどありません。また、火を使わないことで周囲の空気があたたまりにくく、部屋に熱がこもりません。さらに発生する熱のほとんどを調理に使用できる点も、熱が充満しにくい理由の一つです。室温が高くならないため、暑い夏でも快適に調理できます。
最新式ガスコンロの熱効率は約56%であるのに対し、IHコンロの熱効率は約90%と大きく上回ります。エネルギーを効率よく利用できるので、環境にやさしい点もメリットです。
普段のお手入れが簡単
普段のお手入れが簡単である点も、IHコンロを使用するメリットの一つです。通常のガスコンロは五徳(調理器具を乗せる支持具)や点火装置周辺の作りが複雑で、掃除に手間がかかります。IHコンロのトップコートは平らになっており、掃除の邪魔になる突起物がないため、サッと拭くだけで簡単にお手入れが完了します。また、火を使ったガスコンロのように焼きつくことがありません。多少焦げついてしまった場合も、軽くスポンジでこするだけで汚れを落とせます。
IHコンロのデメリット
IHコンロにはデメリットもいくつかあります。デメリットをしっかりと把握しておかないと、IHコンロを導入したあとで不便に感じてしまうかもしれません。
IHコンロの代表的なデメリットを紹介します。
IH対応の調理器具が必要
IHコンロを使用する際は、IH対応の調理器具が必要です。また、IHコンロに使用できる調理器具は金属製となるため、土鍋や耐熱ガラス鍋などは使用できません。(IH対応の土鍋は使用可)鍋の形状にも注意が必要です。IHコンロは、鍋底が天板に触れることでセンサーに反応して発熱します。
火が見えないので微妙な火力調節が難しい
IHコンロは火を使用しないため、目で見て火力を判断できません。火力はLEDランプや目盛りで確認できますが、慣れるまではどの程度の火力になるのかを確認しながら調理する必要があります。また、IHコンロは調理器具の底が重点的に加熱されるため、鍋底が焦げやすい点もデメリットです。特に長時間加熱する場合は注意しましょう。
停電時に使用できない
電気で加熱するIHコンロは、当然ですが停電時には使用できません。万が一の際に備えて、カセットコンロとガスボンベをストックしておくことをおすすめします。ただし、蓄電池システムを設置することで、停電時でも一定時間は電気を使用できます。国や地方自治体の補助金制度が利用できる場合もあるため、防災対策として検討してみましょう。
ガスコンロのメリット
IHコンロの登場後も多くの家庭で使用されているガスコンロには、さまざまなメリットがあります。
構造がシンプルなので壊れにくい
ガスコンロは、構造がシンプルで故障しにくい点が大きなメリットです。また、IHコンロのように天板に直接鍋を置くわけではなく、天板自体もただの鉄板であるため、吹きこぼれや衝撃に対する耐久性も高くなっています。火力が強いので鍋をあおりながら調理ができる
ガスコンロは火力が強く、実際の炎を使用するため強火調理が簡単にできます。チャーハンを作る際などに、火から鍋を離してあおりながら調理できる点も魅力です。また、網を使って食材を直接炎で炙ることもでき、調理の幅が広がる点もガスコンロのメリットです。
停電しても使用できる
ガスコンロは乾電池式であれば電気を使用しないため、停電時にも調理できます。地震が起こるとガスの供給が停止されることもありますが、停電に比べると頻度は高くありません。
調理器具を選ばない
ガスコンロで使用できる調理器具には、基本的に制限がありません。新しい調理器具を購入する際も、選択肢が広がります。特に調理器具にこだわりがある方は、ガスコンロがおすすめです。IHコンロでは使えない中華鍋や耐熱ガラス鍋なども問題なく使用できます。
ガスコンロのデメリット
IHコンロは、ガスコンロのさまざまなデメリットを解消した調理器具です。ガスコンロを選択する際は、デメリットが許容できるかを事前に検討しましょう。
火災の危険がある
ガスコンロ最大のデメリットは、火災の危険があることです。注意深く使用をしていても、鍋の油に引火したり周囲のものに燃え移ったりと、思わぬ事故が発生するおそれがあります。家庭での火災原因の上位に、常にあげられるのはガスコンロです。ガスコンロの近くに燃えやすいものは置かないことや衣服への燃え移りを徹底し、火災には十分気をつけましょう。特に小さなお子さまのいるご家庭や、高齢者の一人暮らしなどでは安全への配慮が必要です。
お手入れが面倒
ガスコンロは、五徳やバーナーキャップなどの突起物が多いため、お手入れに手間がかかります。また、吹きこぼれによってついた汚れが、炎によって五徳や天板に焼きつくと簡単には落ちません。ガスコンロを使用する場合は、こまめな掃除を心がけましょう。また、定期的に五徳とバーナーキャップなどを分解して丸洗いすると、清潔な状態を保てます。
熱が部屋にこもり空気が汚れる
調理の際、熱がこもって室温が上がりやすくなる点もガスコンロのデメリットです。ガスコンロの火は、調理器具だけではなく、周りの空気まであたためてしまいます。特にキッチンが独立しているクローズドキッチンでは熱がこもりやすいため、夏場にガスコンロを使用する際は熱中症にも十分注意しましょう。また、炎を燃やすと一定量の一酸化炭素や二酸化窒素が発生します。ガスコンロの使用時には必ず換気扇を回すなど、室内の空気が汚れないよう心がけてください。
IHコンロとガスコンロのポイント別比較
単純なメリットとデメリット以外にも、IHコンロとガスコンロには異なる特徴があります。また費用面もどちらを導入するか決めるうえで重要なポイントでしょう。
IHコンロとガスコンロの費用面での違いをご紹介します。
光熱費
一般的に、ガスコンロのほうが光熱費は安くなります。特に光熱費が安くなるのは、都市ガスを利用したガスコンロです。ただし、太陽光発電のような発電設備がある家庭では、IHコンロを使用したほうが家庭全体で考えた場合の光熱費が安くなることもあります。IHコンロとガスコンロを選ぶ際は、本体のみにかかる光熱費だけではなく、各ご家庭で導入している省エネ設備も含めて総合的に判断しましょう。
本体費用
本体はガスコンロのほうが安く販売されています。IHコンロは構造が複雑なためガスコンロよりもやや高額です。具体的には、ガスコンロは安いもので6万円程度から、IHコンロは15万円程度から購入できます。ただし、ハイグレード製品同士で比較すると、大きな価格差はありません。
交換工事費用
ガスコンロのほうが、交換工事費用は少々高くなります。IHコンロの工事費は2万円程度、ガスコンロは2.5万円程度です。耐用年数は、IHコンロが10〜15年、ガスコンロが10年程度といわれているので、ややIHコンロのほうが長くなっています。ただし、ガスコンロからIHコンロに交換する場合はさらに高額な費用がかかります。5~10万円が相場ですが、電気回線の状況などによっても費用が変わってくるので注意しましょう。さらに、ガスの閉栓や電圧を100V→200Vに変更する必要もあります。
料理の内容など状況に合わせて最適な器具を選ぶことが重要
IHコンロとガスコンロのどちらが適しているかは、家庭の状況や目的によって異なります。メリットとデメリット、必要なコストを徹底的に比較して、最適なコンロを選びましょう。また、近年ではどちらも性能がアップし、物理的に炎を使用すること以外大きな違いはなくなってきています。迷った際は専門の販売店に相談することも、最適なコンロを選ぶための近道です。