Beautiful Living

好きなものに囲まれた
居心地よいインテリアをご紹介

奈良で人気のカフェ・雑貨店「くるみの木」を営み、空間コーディネーターとしても活躍する石村 由起子さん。ご自宅を訪ね、長年かけて育んできたインテリアの工夫をお聞きしました。 前編・後編を通じて、心地よい住まいづくりのヒントを探ります。

石村 由起子さん

1983年、奈良市法蓮町にカフェ・雑貨店「くるみの木」をオープン。奈良町の観光案内施設「鹿の舟」や「まちのシューレ963(香川県高松市)」「湖(うみ)のスコーレ(滋賀県長浜市)」などもプロデュース。著書に『あふれる日々を、ととのえる。(PHP研究所)』『わたしの食器棚(PHP研究所)』『うつわ(青幻舎)』などがある。

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石村 由起子さんのお仕事

カフェのオープンは一輪のあじさいから

— 全国にファンを持つ奈良市のカフェ・雑貨店「くるみの木」を、どのような経緯で開かれたのでしょうか。
「子どものときに母との交換日記に『くるみの木』という名のお店をやりたいと書いたことがあるんです。でも、大人になって結婚して、まさか自分がカフェを開くとは思いもしませんでした。きっかけは1983年のこと。夫を駅まで送った帰りに、建物の庭に咲くあじさいにすっかり目を奪われてしまって。挿し木をお願いしようと建物の中に入ると、『ここでカフェをやったら素敵だな』と感じて、入居されていた会社の方にその話をしてみたんです。すると、もうすぐ移転されると聞き、『ここでカフェを開きたい』と思い立って、その日のうちに建物の大家さんを訪ねました。一度は断られましたが、夫も後押ししてくれて、建物を借りられることになり、 『くるみの木』 が誕生しました」


空間コーディネートで大切にしていること

— カフェでは飲食だけでなく、仕立てのよい日用品や作家ものの品々を扱い、現在は空間コーディネートも手がけられています。お仕事をする上で、どのようなことを大切にされているのでしょうか。
「建築会社に勤めていたことがあって、そのときの経験が自然と今の活動にもつながっています。空間コーディネートは、自分から進んでというよりも、 20年ほど前に依頼を受けて『やってみようか』と始めたのがきっかけです。カフェの運営でも、空間コーディネートでも大切にしているのは、お客さまに『心地いい』と感じていただくこと。私は自宅によく人を招きますが、お金をいただく仕事でも、いただかないプライベートでも、おもてなしの気持ちは変わりません。昔から人に喜んでもらうことが好きだから、この仕事をしているのだと思います」


心地よい空間をつくるために

今回訪ねたお宅は、広々としたインナーテラスやリビングがあり、教室を開いたり、たくさんの来客をおもてなしするために使われています。陽光がたっぷりと差し込み、庭の緑に癒される居心地のよい空間です。

居心地のよい空間は自然のものから

— 石村さんのご自宅を拝見していると、植物や果物など、自然のものが随所に生かされ、そこから心地よさが生まれているようにも感じます。
「空間として一番大切なことは居心地のよさであり、目に映るものが楽しい、うれしい、ここに来てよかったと思っていただけることが、おもてなしにつながると思います。かといって、インテリアで華美な飾りはしません。お花を買うことはなくて、庭のものをちょっと摘んでみたり。庭に植物がいっぱいあるので、少し摘んでくれば何かができます。果物も食べれば美味しいですが、重ねて置くだけでも空間を彩りますよね」


何気ないものにある美しさを見つけて

— 身のまわりにすでにある、美しいものに気づくことが大切ということですね。
「そうですね、こういうちょっとした喜び、見逃している喜びがあるのではないかと思います。たとえば、いただきもののワサビをガラスに入れ、果物と一緒に飾るだけでも、彩りを添えることができます。『飾る』というと何かをプラスしていくことだと思われがちですが、そうではなく、庭にあるものや何気ないものに目を向けるだけでも、十分綺麗だと感じていただけるはずです」


ものは飾って見せて楽しむ

— 吟味して選ばれたものがシンプルに飾られ、一つ一つのものが空間の中で生きている。ご自宅を拝見して、そんな印象を受けました。
「グラスひとつとっても、見た目がよくても飲みにくかったら、だんだん使わなくなります。使えることが一番です。見た目と実用性の両方が大事ですね。もののために場所をつくるのではなく、置くところがなければ買わない。コレクションではなく、飾りたい、使いたいと思って買うものですから。そして、せっかく買ったものをしまい込むのはもったいない。気に入ったものを飾って見せて、楽しむということを大事にしています」


本当に気に入ったものを選ぶ

— インテリアの中でも重要な要素となる家具は、どのようにセレクトされているのですか?
「試しに置いて使ってみることができないので、想像して買うしかないですね。ただ、そんなに頻繁に買い替えるものではないし、本当に気に入ったものを選ぶほうがいいと思います。そのポイントは人それぞれ違いますから、自身がどう感じるかが大切ではないでしょうか。私は、1つの椅子を選ぶのに何年もかけることがありますし、ヤカンも本当に気に入ったものが見つかるまで買いません。鍋で代用するくらいの気持ちです。本当に気に入ったものを暮らしの中に取り入れています」


石村さんの素敵なインテリア

始まりのYチェア

— ご自宅のインテリアは、北欧の家具が多い印象ですが、なにかきっかけがあるのですか。
「結婚したときに、名作椅子として知られるYチェアを夫と一緒に選んだのが始まりですね。当時は今ほど知られていなかったのですが、それでも高価で、なんとか2脚だけ買ってテーブルは諦めました。包み込むような座り心地のよさがあり、実用主義の夫も気に入ったほど。民芸家具にもこういう曲げ木の椅子はあるのですが、当時住んでいたマンションのインテリアには合わなかったので、合わせやすい北欧の家具からスタートしました」


自分の目が喜ぶデザインを

— インナーテラスやリビングなどご自宅の至る所に、たくさんの椅子が置かれています。どれも素敵な椅子ばかりですが、どのようにセレクトされているのですか。
「椅子だけでも50脚くらいは持っています。たくさんの来客があるので、みなさんに座っていただけるよう、あちこちに配置しています。椅子を選ぶときは、座り心地をある程度確認はしますが、まずは自分の目が喜ぶデザインが基準ですね。気に入ったものに一つ一つ出合って集めてきました」


落ち着きのあるリビング

— リビングのインテリアはシンプルでいながら味わいがあり、ゆったり寛げそうですね。
「ソファはアームレストを動かしたら、ベッドのようにゴロンと寝転ぶことができて機能的。脚のラインも美しいですよね。横のチェストは、45年くらい前に買った北欧家具です。蛇腹になっている扉は、フルオープンにできるので中の物が取り出しやすく、造りも綺麗で職人の腕のよさがうかがえます。和紙でつくられたシンプルなアートを飾り、ティッシュも市販のものですが、黒1色のパッケージを選び、落ち着いた雰囲気に仕立てています」


後編ではインテリアの背景や飾り方の工夫をご紹介。6月下旬に公開予定


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