私福の時間vol.22

プランスノワール[Patisserie Rechercher(パティスリー ルシェルシェ)]

プランスノワール[Patisserie Rechercher(パティスリー ルシェルシェ)]

真っ黒なチョコレートムースは、薫り高いトンカ豆が主役

大阪の名店「なかたに亭」で13年間腕を磨き、スーシェフまで務めた村田義武さん。大阪・南堀江で「ルシェルシェ」を開業するにあたってスペシャリテとして考案したのが、トンカ豆を使ったチョコレートムース「プランスノワール」です。「チョコとトンカ豆は相性がよく、ボンボンショコラではよくある組み合わせ。ガトーでもその美味しさを表現したいと思い、トンカ豆をガッツリ使いました」。チョコレートは苦味の強いもの、フローラルな香りのもの、酸味のある味わいのもの、と風味に個性のある3種類を使用。その狙いを「トンカ豆の強い香りを際立たせるため」と話します。まさに、トンカ豆が主役のスイーツは、スパイシーで芳醇な味わい。濃厚なチョコレートとともに、エキゾチックな風味がティータイムを印象的なものにしてくれそうです。
<PHOTO>プランスノワール500円(税別)

キレのある甘さ、リッチな味わい

「ババ ヴァン ルージュ」は、パン生地を使った発酵菓子。生地には、オレンジやレモンの皮で香り付けした赤ワインを染み込ませてあり、サングリアのような爽やかな味わいが楽しめます。「エデン」は、村田さんが試行錯誤して完成させたタルトタタン。リンゴの甘酸っぱい味わいと香り、フレッシュな食感が魅力です。現代アートさながらのデコレーションが目を引く「ピカソ」は、フロマージュブランとハチミツのムース。中に忍ばせたアプリコットのジュレとティムットペッパーのスパイシーな香りがアクセントになっています。

<PHOTO>左からババ ヴァン ルージュ500円、エデン560円、ピカソ520円(すべて税別)

「私福の時間とは?」

パティシエがプライベートで至福の時を感じるスイーツをリレー方式で毎月ご紹介。今回のプランスノワールを推薦いただいた松井さんのグアナラなどはvol.21で掲載しています。


[美味しさの秘けつ]香りを引き出す独自の調理法と、素材の組み合わせが決め手

「お菓子づくりで大切にしているのは、香り。本場のフランス菓子と日本の洋菓子との違いはそこにあると思います」と話す村田さん。素材の使い方や調理法を駆使して、薫り高いお菓子を生み出しています。例えば通常3~4時間煮詰めるタルトタタンのリンゴは、香りを損なわないために2時間程度に短縮。オーブンで焼く時間も通常より短くし、リンゴ本来の食感と風味が残る理想のタタンを完成させました。また、スパイスを加えたり、チョコレートクリームには、砂糖の代わりに柑橘系の風味が爽やかなタスマニア産レザーウッドのハチミツを使うなどし、「ルシェルシェ」らしいお菓子を生み出しています。新作は駄菓子や料理などからインスピレーションを得ることもあり「すし屋のガリの食感と甘酸っぱさを、夏のお菓子で表現したこともありますよ」と村田さん。これから、どんな料理に着想を得て、逸品スイーツを生み出していくのか楽しみです。

SHOP DATA
Patisserie Rechercher(パティスリー ルシェルシェ)

大阪・南堀江は、洋菓子の名店が点在するスイーツ激戦区。「ルシェルシェ」は、そんなエリアの裏通りにありながら注目を集め、百貨店でのクリスマスケーキ予約販売は即完売するほどの人気ぶりです。ショーケースに並ぶ22種類前後の生菓子は、どれもかわいらしく、見るだけで心華やぐデザイン。黄金色に輝くタルトポムや一口サイズに焼き上げたパン・デピスなどの常温菓子も充実しています。

大阪市西区南堀江4-5 B-101 Tel.06-6535-0870
[営業時間]10:00~19:00
[定休日]火曜 ※月1回不定で連休あり

Patisserie Rechercher(パティスリー ルシェルシェ)の公式サイトはこちら

村田さんが惚れこむ逸品は……

次回
予告
シャンドワゾー(埼玉県川口市)
[vol.23]ミゼラブル

「『ミゼラブル』はベルギーの伝統菓子で、牛乳を買えない貧しい人たちが水で代用してつくったお菓子です。これまでいろいろなお店でミゼラブルを食べてきましたが、『シャンドワゾー』の村山さんが手がけるミゼラブルは独創的です。塩がちょっと効かせてあったり、底にラムレーズンを隠してあったり……。それが味や食感のアクセントになっています。お菓子づくりの腕前はもちろん人柄もよく、それがお菓子に表れていると思います」