サバラン オ アルマニャック[Patisserie Passion de Rose]
サバラン オ アルマニャック[Patisserie Passion de Rose]
今回ご紹介するのは、東京・港区白金にある「パティスリー パッション ドゥ ローズ」の「サバラン オ アルマニャック」です。サバランとは、19世紀半ばにフランスで誕生したクラシカルなお菓子で、洋酒にたっぷりと浸された上品でリッチな味わいが特徴です。オーナーシェフの田中貴士さんは、サバランとの出合いがパティシェを目指すきっかけとなり、理想の味を追い求めてこのお菓子を完成させました。生地のコネから発酵、焼き、シロップをつけるという工程はシンプルながら奥が深く、生地を作るときの温度、作業ごとにかかる時間などを細かく管理しながら仕上げています。洋酒はラム酒ではなく、芳醇な香りのブランデー「アルマニャック」を使い、生地には柑橘系のシロップを染み込ませてあります。
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サバラン オ アルマニャック500円(税込)
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左:ローズ580円、右:パッション580円
開業当初からある2つの看板商品も注目したいところ。「ローズ」はラズベリーのクリームで花びらを作り、下がチョコレートのタルトになっていて、女性への贈り物に喜ばれるそう。「バッション」はパッションクリームの中に5種類のフルーツのジュレを封入し、軽やかながら濃厚な味わいのケーキです。どちらも店名の「Passion(情熱)」と「Rose(薔薇)」に由来するケーキで、仕上がりの美しさと美味しさが多くの人に支持されています。
ほかとは違うクリームや生地を味わって
丁寧な生地づくり、クリームづくりこそが最も重要であると考える田中さん。「ミルフィーユ」や「シュー ア ラ クレーム」はカスタードづくりにこだわり、原料の卵を厳選して、甘さよりもコクがある仕上がりになっています。「ミルフィーユ」には、アンベルセという通常とは違う方法で仕立てた生地が使われ、ハラハラと口溶けがよい点も特徴になっています。また、ドライフルーツが15種類も入った「ケーク15フリュイ」やアーモンドの香ばしさが印象的な「フロランタン」、レモンの香りがさわやかな「マドレーヌ シトロン」など、焼き菓子も定評があります。
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左:シュー ア ラ クレーム340円、右:ミルフィーユ450円/左手前:フロランタン250円、左奥:マドレーヌ シトロン210円、右:ケーク15フリュイ290円
「私福の時間とは?」
パティシエがプライベートで至福の時を感じるスイーツをリレー方式で毎月ご紹介。今回のサバラン オ アルマニャックを推薦いただいた、ジェローム・ケネルさんのタルト カカオエットはvol.11で掲載しています。
田中さんは、「タイユバン・ロブション」を経て、フレンチの巨匠として知られるアラン・デュカス氏がプロデュースした「BENOIT(ブノワ)」のオープニングスタッフを務めたあと渡仏。パリの「デ ガトー エ デュ パン」でスーシェフパティシエを務め、帰国後は再びデュカス氏の各店でシェフパティシエを経験。そして「ピエール・エルメ・パリ」でスーシェフを務めたあと、当店を開業させました。クラシカルなお菓子を美味しく作り上げるデュカス氏の影響もあり、田中さんもクラシカルなスイーツを追求し続けています。そんな田中さんの信念は、常に基本の技術を磨き、情熱をもって取り組むこと。「とにかく基本、基本、基本。基本に勝るものはないと考えています。ですからお菓子づくりの基本となるクリームや生地づくりも真剣に、手を抜かず、丁寧かつスピーディに行います。そういった取り組みが最終的に美味しさにあらわれるものだと思っています」と話してくれました。
SHOP DATAPatisserie Passion de Rose
港区白金界隈は、高級住宅街として知られていますが、一部には庶民的なたたずまいの商店街も残り、さまざまな表情を見せる街です。お店は、南麻布に近い白金1丁目にあり、白い壁に華やかな赤が印象的。小さいながらも洗練された雰囲気の店内には30種類ほどのケーキや焼き菓子が並んでいます。4月の移転後は、イートインコーナーが設置されます。
田中さんが惚れこむ逸品は……
「パティスリー ラ プラージュの林正人さんはお菓子に対してのこだわりがすごく強く、アイデアも豊富なシェフ。その丁寧な仕事はとてもいい勉強になります。看板商品の『エクレア』は、シュー生地とクリームのバランスが良く、甘さは控えめ。シンプルなケーキこそバランスが難しいのですが、林シェフのエクレアは、いつ食べても美味しいです」