ナチュラルクリーニングとは、天然素材をなるべく使う掃除の方法で、環境や体に優しく、小さいお子様やペットがいるお家でも安心です。残った洗剤をしっかり洗い流さないと危険ということもありませんし、物によっては、すすぎや拭き取りが不要なものも。汚れの性質を把握しておけば、たくさんの洗剤を買い揃える必要もありません。今回は、ナチュラルクリーニング講師として活躍する、本橋ひろえさんにお話を伺いました。
本橋 ひろえさん
ナチュラルクリーニング講師をはじめて10年以上。科学的かつ主婦目線でわかりやすい解説を行う人気の講座は、東京を中心に全国に拡大。テレビや雑誌、著書の出版など幅広いメディアで活躍する1児の母。著書に『ナチュラル洗剤で安心・ラクチンおそうじ虎の巻』『ナチュラル洗剤そうじ術 』(いずれもディスカヴァー・トゥエンティワン)など。
家の中で必要な洗剤は、①アルカリ性のもの②酸性のもの③除菌ができるもの④漂白できるもの、合計4種類。これだけあれば家の中のほとんどの汚れを落とすことができます。それぞれの特徴を活かしてナチュラルクリーニングを行いましょう。
重曹
●油分の多い汚れに反応して汚れを落とす。
●粉のまま使うとクレンザー代わりに。
弱アルカリ性で、油汚れや食品・人の体から出た汚れなど、酸性の汚れが落とせます。家の中の汚れのほとんどは酸性なので、出番が多い素材です。溶かして使う場合は、40度くらいのお湯に溶かします。また、冷たい水に溶けにくいことを利用し、粉のまま研磨剤としても使えます。
セスキ炭酸ソーダ
●重曹と似た性質を持つが、重曹よりも水に溶けやすい。
●強力なので使用するときは手荒れに注意。
重曹と同じくアルカリ性の性質を持ち、重曹よりも水に溶けやすいです。また、洗浄力が強いので、古く固くなった油汚れに適しています。皮脂や手アカなどのタンパク質汚れにも有効ですが、洗浄力が強い分、手荒れしやすいので、使用するときは手袋を着けておくほうが安心です。
クエン酸
●水アカ・石けんカスなどの汚れ落としに。
●塩素系洗剤と混ぜるのは✕。
重曹・セスキ炭酸ソーダと違い酸性の性質を持つので、水アカや石けんカス、トイレのアンモニア臭など、アルカリ性の汚れに適していて、抗菌や消臭の作用もあります。基本的に水に溶かして使用しますが、塩素系の洗剤と混ぜると有毒ガスが出るので注意してください。
アルコール(エタノール)
●雑菌やカビの除菌ができる。
●揮発性が高く、二度拭きする必要なし。
アルコールは雑菌やカビに効果的で、皮脂や食品による油汚れなどの拭き掃除にも使えます。揮発性が高く跡が残らないこと、菌が繁殖することがないので日持ちすることが特徴です。
過炭酸ナトリウム
●汚れ落とし、除菌、漂白ができる。
●強力なので使用するときは手荒れに注意。
アルカリ度が高く、強い洗浄力があり、さらに除菌・漂白もできる優れもので、最近特に注目を集めています。セスキ炭酸ソーダと同じく、手荒れの危険性があるので、使用するときはゴム手袋を。
掃除の効率がアップするので準備しておきましょう。
スプレーしやすいトリガータイプが使いやすいです。複数用意する場合はラベルを貼り、取り違えないようにしましょう。
スクイージーとも言われ、100円均一ショップでも買うことができます。窓ガラスを拭き上げるときや、お風呂場の水滴落としに便利です。
皮脂汚れに ⇒ 重曹、アルコール
「お家のまんなか」を安全&キレイに保つ
リビングは家族が頻繁に出入りする場所なので、安心・安全に清潔さを保ちたい場所です。床の汚れは主に、皮脂や食べこぼしなど酸性の汚れですので、アルカリの性質を持つ重曹を使用。重曹水に浸したぞうきんを固く絞り、まんべんなく床を拭いていくだけでOK。
油汚れがよく落ちるアルコールでも床掃除ができます。特に雨の日など換気ができないときは、揮発性の高いアルコールを使うと湿気がこもりません。
[+ワンポイント]
大量の重曹水で掃除の時間を短縮!
床などの大きな部分を掃除する場合は、あらかじめ大量に重曹水を作っておくと掃除がスムーズです。濃度さえ気をつければ、水拭きで拭き取る必要もありません。目安は、2Lの水に対して小さじ5の重曹になります。
手アカ・排気ガスに ⇒ 重曹
気持ちもリビングも明るくスッキリ
窓の内側の汚れは人が触ったときの汚れや油汚れ、窓の外側の汚れは泥や排気ガスが考えられます。泥は水だけで落ちますが、皮脂や排気ガスは酸性の汚れになるので、窓の掃除にも重曹がおすすめ。アルコールでもOKですが、重曹よりコストがかかってしまうため、家中の窓を拭く場合は、重曹水に浸したぞうきんで拭いていきましょう。壁も同じ方法で拭き上げていきます。
[+ワンポイント]
乾く前に拭き取り!
重曹水は拭き残しがあると白い跡が残ってしまうので、最後に水をスプレーして仕上げに水切りします。特に乾燥している日や気温の高い夏場は、水の乾きが早く、跡が残りやすくなるので、しっかり洗い流しましょう。
油汚れに ⇒ 重曹、水アカに ⇒ クエン酸
クエン酸で水まわりピッカピカ
シンクの食品の油汚れには、粉のままの重曹を振りかけて、スポンジでこすり洗いをするのが効果的です。最後にサッと水を流せば、粉が残る心配もありません。水アカや石けんカスには、水1カップにクエン酸小さじ1/2を溶かしたクエン酸水をスプレーしていきます。水気が残っていると水アカの原因になるので、しっかり拭き上げることも大切です。
[+ワンポイント]
キッチン家電の洗浄にもクエン酸を!
電気ケトルは、適量の水と粉のままのクエン酸小さじ1を入れ、湯を沸かしてからすすぐと水アカが落ちます。食洗機も、クエン酸を洗剤投入口に入れ、1回運転するだけでキレイになりますよ。
油汚れに ⇒ セスキ炭酸ソーダ
古くて固いベタベタ汚れにさよなら
ガンコな油汚れがこびりついたコンロまわりには、重曹よりも洗浄力の強いセスキ炭酸ソーダを使いましょう。まず、五徳などのまわりの部品を取り外し、水1カップにセスキ炭酸ソーダ小さじ1/2を、全体的にスプレーして拭き上げます。また、コンロ近くの壁にも油汚れは飛びやすいので、同じように掃除します。強めのアルカリが残るのは心配なので、すすぎや拭き取りはしっかりと。
[+ワンポイント]
重曹パックで汚れがツルン!
グリルの焼き網は、キッチンペーパーを重ねて上から重曹を振りかけてからお湯で濡らし、網にぴったり貼り付くよう「パック」すると、ガンコな汚れが緩みます。
カレーやシチューを作った後など、しつこい油汚れが鍋に残ったときもセスキ炭酸ソーダが活躍。表面の汚れをキッチンペーパーで拭き取ってお湯を張り、大さじ1のセスキ炭酸ソーダを入れて溶かします。しばらく置き、食器用洗剤で洗い流せばOK。調理後すぐにつけ置きしておくと、食事中に汚れが緩み、後片付けがラクになります。
便座・床・壁に ⇒ アルコール、便器に ⇒ 重曹、
輪ジミに ⇒ 過炭酸ナトリウム
汚れやすい場所は、こまめにお手入れ
尿は体から出た直後は酸性なので、アルカリ性の重曹を使いたいところですが、重曹水は日持ちしないので、わざわざ作るのは面倒。なので、日持ちして除菌効果の高いアルコールをトイレの中に置いておき、便座、床、壁などの汚れが気になったときにサッと拭き取る習慣をつけましょう。便器の中をこすり洗いするときは、粉末の重曹を振りかけて磨きます。便器の水がたまる部分の汚れは、大さじ1杯の過炭酸ナトリウムを入れて一晩置いておくと、イヤな輪ジミの予防になります。
[+ワンポイント]
トイレの掃除道具は使い捨て!
トイレ掃除の意外な落とし穴は掃除用具。トイレブラシは使った後そのままにしておくと雑菌が繁殖しますし、ゴム手袋を毎回洗うのは面倒なので、メラミンスポンジと使い捨てできるビニールの手袋の組み合わせがおすすめ。使い終わった後は、どちらもそのまま捨てることができて衛生的です。
湯アカに ⇒ 重曹
裸で直接触れる場所だから安心・安全に
お風呂は安全性が高い重曹が大活躍する場所。泡が立つ洗剤と違い、すすぎ残しがカビの原因になることもありません。浴槽はシャワーで濡らし、アクリルたわしに粉のままの重曹をつけ、湯アカを落とすように磨いていきます。お風呂の床は細かい溝がたくさんあるので、ここにも粉の重曹をまいてブラシでこすります。お風呂の順番が最後のときは、入浴ついでに掃除をすると、とても効率的。肌についても心配がない重曹ならではの掃除術です。
[+ワンポイント]
家のカビをお風呂から防ぐ!
カビは胞子で増えるので、お風呂にカビが生えると家中に広がる可能性があります。お湯の温度が30度辺りを下回ると雑菌が繁殖しやすくなるので、浴槽のお湯は夜のうちに排水を。仕上げに壁の水分をスクイージーで水切りしましょう。
便器の内側のフチやお風呂の鏡などはクエン酸水をスプレーし、キッチンペーパーを貼り付けて、さらにその上からクエン酸水をかけて、「パック」をします。そのまま5〜10分放置しておくと、落ちにくい汚れが緩み、掃除がしやすくなります。