睡眠は人生の1/3を占める大切なもの。
少しずつ意識と習慣を変えて快眠へ。

睡眠は、量と質のどちらも大切。最適な眠りの叶え方は人それぞれ異なります。そして、ちょっとしたコツの積み重ねで自分に合った快眠は実現することができます。睡眠のキホンや生活習慣の改善について、快眠セラピストの三橋美穂さんに教えていただきました。

よい睡眠のためには「量」と「質」が大切!

●量(長さ)
働き盛りの成人の方の多くは、7〜8時間が理想。たっぷり時間が確保できていると日中に眠気を感じにくく、幸福感も上がります。

●質(深さ)
入眠後しばらくすると、睡眠全体の中で最も深い眠りが訪れます。脳がしっかり休まり、体の回復を促してくれます。

三橋 美穂さん

寝具メーカーの研究開発部長を経て、2003年に独立。分かりやすく実践的なメソッドが、テレビや雑誌等で支持を集め、睡眠のスペシャリストとして多方面で活躍。全国での講演活動や執筆、取材などを通して、眠りの大切さや快眠の工夫、寝具の選び方などを提案している。著書に『驚くほど眠りの質がよくなる 睡眠メソッド100』(かんき出版)、『脳が若返る快眠の技術』(KADOKAWA)など。


【睡眠のキホン】

美しさと健やかさは夜つくられる

眠っている間はさまざまなホルモンが分泌されますが、その中でも重要なのは新陳代謝を高めて、肌のターンオーバーを促してくれる「成長ホルモン」。睡眠には、脳が動いた状態で記憶の整理などを行う「レム睡眠」と、脳が休息状態の「ノンレム睡眠」があります。

さらにノンレム睡眠には段階があり、より深いノンレム睡眠に到達するのは主に眠り始めの3時間で、このときに成長ホルモンが分泌されます。全身に行き渡る時間も必要なので、成人で7〜8時間、高齢者で6~7時間の睡眠時間が目安。働き盛りの人たちは、本当に必要な睡眠時間より1~2時間少なく見積もっている人が多いようです。

睡眠不足になると、免疫力が低下するため病気のリスクが高まったり、代謝が悪くなることで太りやすくなります。イライラや集中力の低下など精神的なマイナス面も。しかし裏を返せば、よい睡眠がとれていれば老化や病気のリスクは減るということ。明るく前向きに過ごせるよう、量と質のバランスがとれた睡眠を意識しましょう。

話題の「睡眠負債」は週末に正しく返済

最近よく耳にするようになった「睡眠負債」。寝だめして返済する人が多いですが、計画的な返済のためには、週末の起きる時間を工夫しましょう。

目覚ましをセットするのは普段起きる時間の1時間後。平日7時に起きている方であれば、8時までに起きてください。まずはしっかり太陽の光を浴びて朝食を食べ、体内時計をリセットさせます。食後に眠気を感じた場合は二度寝をしてもOK。ただし午前中には起きるようにしましょう。

また、休日前の夜更かしはNG。つい遅くまで起きてしまいがちですが、そうすると「起床が遅くなる→夜寝つけない→休み明けから寝不足になる」という悪循環に陥りやすくなります。大切なのは、早く寝て睡眠時間を確保すること。睡眠負債がある場合は週末にカシコく返して、気分よく休み明けの朝を迎えましょう!

スムーズな眠りのための5つのルール

①体内時計を整える

体は1日の周期でリズムが刻まれるので、太陽光を浴びて体内時計をリセットし、規則正しい生活を意識しましょう。

②日中は活動的に過ごす

体に疲れが溜まってくると、休息をとるために脳が信号を出すことで眠くなります。なるべく体を動かすよう心掛けましょう。

③深部体温のメリハリをつくる

体の内部の体温が下がるタイミングで眠りのスイッチが入ります。寝る前はお風呂で湯船につかって血行をよくすることで深部体温がスムーズに下がり、眠りやすくなります。

スムーズな眠りへ誘う「正しい入浴術」はこちら

④リラックスする

アロマテラピーやストレッチ、音楽などでリラックスすると、心身を回復させる副交感神経の働きが高まります。

⑤快適な睡眠環境を整える

眠るときの環境はとても大切。就寝前から照明を落とし、心地よい温度・湿度を保ち、体に合った寝具やパジャマを用意しましょう。


【1日の習慣で見直したいポイント】

【朝】明日から実践!スッキリ起きるコツ

なかなか起きられない原因のひとつとして、基本的に睡眠時間が不足しているというケースがあります。スッキリ起きられない人は、まず、眠る時間と起きる時間をチェックしてみましょう。

どうしても起きられないときは耳を引っぱるのが効果的。耳には100以上のツボがあり、引っぱることで脳が刺激され、目が覚めやすくなるのです。

また、目覚まし時計を5歩以上離れた場所に置くこともおすすめ。体に運動の司令を出す脳の運動野という部分が刺激され頭が働きます。

【日中】夜の快眠づくりは昼からスタート

日中に活動することで、体内時計を調整するのはとても重要なこと。太陽光を浴びると神経伝達物質である「セロトニン」が分泌されてパフォーマンスが向上。セロトニンは日が落ちて暗くなると眠気を促す「メラトニン」へと変化するので、午前中に30分以上は意識的に太陽の光を浴びましょう。

体を動かしておくことも重要です。とは言っても本格的な運動は難しい…そんな人は電車や信号待ちの片足立ちがおすすめ。1分間×3回の片足立ちをするだけで、1日で約53分歩いたことと同じ運動量になるそう。ちょっとした隙間時間で効率的に運動量を上げることができます。

また、昼寝は気持ちいいものですが、寝過ぎると夜の睡眠に影響します。仮眠は、毎日12〜15時の間に20分以内でとるのが効果的。ついつい眠り込んでしまわないよう、事前にカフェインを摂っておく、横にならないなどの対策をしておくとよいでしょう。

【夜】寝る前は頭と胃をからっぽに!

夜は眠りを妨げるものがたくさんあるので要注意。中でも気をつけたいのはスマホです。画面から出るブルーライトは、眠気をもたらす「メラトニン」の分泌を減らすといわれています。ブルーライトを浴びると脳が活性化してしまうので、リラックスした状態でスムーズに眠れるよう、寝室にスマホを持ち込まないほうがいいでしょう。

また、寝る前はアルコール、タバコ、カフェインも控えましょう。お酒を飲むと眠くなって寝付きがよくなることもありますが、睡眠の質は確実に低下。食べた物が胃に残っていると、内臓の体温が下がらず睡眠の妨げになるので、夕食は就寝3時間前までにバランスのいい軽めのものを食べるようにしましょう。

やってみよう!忙しい人のための6か条

①平日の睡眠は最低6時間

本当は7~8時間とりたいところですが、最低6時間は確保。6時間を下回ると日中のパフォーマンスが急激に低下します。

②不足は昼休みの仮眠で補う

昼休みには15分の仮眠タイムを。目を閉じて視覚情報を遮断するだけでも、脳機能の回復に役立ちます。

③4-7-8呼吸法を行う

4秒吸って、7秒止めて、8秒吐く。これを4〜10回繰り返し。寝始めの呼吸が深くなり、疲れが取れやすくなります。

④就寝アラームをかける

起きるためではなく寝るためのアラームを設定。つい夜更かししてしまう人におすすめです。

⑤休日の起床時刻は、平日の+1時間

平日も休日も同じ時間に起きることが理想ですが、前述の通り、普段起きる時間の1時間後までには起きてください。「睡眠負債」を返す場合は、体内時計を乱さないように注意が必要です。

⑥目覚ましのスヌーズを使わない

起床時刻の前に一度起きることで、結果的に睡眠時間が削られます。睡眠時間がとれない人ほど1回で起きるように心掛け、少しでも睡眠時間を確保しましょう。


【寝具・環境の見直しポイント】

快眠のドレスコードは「パジャマ&ノーパン」

部屋着でそのまま寝ている方もいますが、やはり眠るときにはパジャマが最適。部屋着は少し厚みのあるものが多く、布団との摩擦が生まれるため寝返りを打つときにも余計な力がかかってしまいます。生地は綿やシルクなどがおすすめ。特にシルクは吸湿性と放湿性に優れており、肌ざわりもいいので睡眠に適した素材です。

締め付けがないことも眠りの質を上げるための重要なポイント。ノーパン+腹巻きはお腹が冷えず、圧迫感もない熟睡スタイルです。寝るための専用服に着替えることは、おやすみモードに切り替えるという作用もあります。快眠のためにも寝間着にはこだわりましょう。

高い枕は睡眠の質を低くする

枕選びの最大の落とし穴、それはほとんどの人が高すぎる枕を好むということです。枕の一番の役割は、立っているときの自然な姿勢を寝ているときも保つこと。首から後頭部にかけての隙間が埋まればいいので、自分にピッタリと合う枕は想像以上に低いものです。

合わない枕を使っていると、首や肩のコリ、イビキなどの原因になります。また、首のシワや二重あごになりやすいというデメリットも。自分にフィットする枕選びで首のキレイをつくりましょう。

枕選びに役立つのはバスタオルです。折りたたんだものを何枚か用意して重ねると即席の自分専用枕に。自分にしっくりくる高さが分かれば、店頭ではスタッフにも見てもらいながら、最適な枕を選びましょう。

“立つように寝る”ためのマットレス選び

枕と同様に、マットレスを選ぶポイントも、立っているときの姿勢をいかにキープできるかが重要です。

例えば、ガッチリした人や体重がある人に柔らかすぎるマットレスは向きません。お尻の部分が沈んでしまい体全体に負担がかかってしまうからです。逆に体重が軽い人は、体が沈みにくく柔らかいほうがフィットします。

「体圧の分散性」と「寝返りのしやすさ」のバランスが重要ですので、スリムな人は「柔らかめ」、標準体型の人は「中くらい」、ガッチリ体型の人は「硬め」という基準を目安に選んでみては。枕との相性もあるので、マットレスと合わせて選ぶことをおすすめします。

夏の快眠を叶える温度と湿度

夏の寝苦しさを解消するためには、温度と湿度の調整が欠かせません。温度は28度以下を目安にすることで寝やすくなり、熱中症を防ぐこともできます。

エアコンはタイマー設定をされる人も多いですが、熱帯夜は一晩中つけておくほうがよく眠れます。扇風機と併用して風を動かすことも効果的。温度を下げすぎたり、冷たい風が体に直接当たると体が冷えて血流が悪くなり、足がつる原因になるので注意しましょう。

湿度は40~60%が理想的。寝ている間にホコリやハウスダストを吸い込まないためにも空気清浄機があるとさらにGOOD。

また、夏は敷きパッドがとても大切。蒸れにくいものや冷感性のものに変えたり、枕をそばがらやパイプ枕などの通気性がよいものに変えると、さらに寝やすくなります。


三橋美穂さん監修のもと、「快眠」に適した
空間づくりへの取り組みをスタート!

「睡眠負債」という言葉が話題となったように、現代人にとって「眠り」は悩みのタネといえます。心豊かな暮らしを考えたとき、快眠を叶えるための睡眠環境を整えることも重要なのでは。そんな想いから、近鉄不動産では三橋美穂さん監修のもと、住まいの中に「快眠」につながる工夫を施す新たな取り組みを始めました。今後の展開にぜひご注目ください。