発電と同時に給湯ができるエネファームは、停電時にも電気を供給できる防災性の高い給湯設備です。しかし、停電時は通常と同じように電気が使えるわけではなく、使用条件や対応機種であるかどうかの確認も必要です。
ガスを使用して発電するエネファーム
エネファームは、ガスを利用して自家発電ができる給湯設備です。発電と給湯のできる、効率のいい次世代エネルギーシステムとして注目されています。
エネファームは、ガスに含まれる水素を取り出し、空気中の酸素と化学反応をさせて発電する仕組みです。発電時の熱を利用してお湯を沸かすため、発生するエネルギーが無駄になりません。
エネルギー効率が高いほか、ガス会社の優遇プランを利用できるため、ガスと電気をそれぞれ利用する場合と比較して、一般的に光熱費を安く抑えられます。
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停電してもエネファームで電気が使える条件
停電時でも電気を利用できるエネファームですが、一定の条件を満たす必要があります。また、すべてのエネファームが、停電時の稼働に対応しているわけではないので注意が必要です。
発電中なら電気を使用できる
突然停電になっても、エネファームが発電中の状態であれば電気が使えます。ガスから水素を取り出すために50W程度の起動電力が必要ですが、発電状態であればエネファーム自体が発電する電力でまかなえるためです。また、発電をしている状態であれば、シャワーなどでお湯も使用できます。使用できるお湯の量は、タンク容量に依存するため事前に確認しておきましょう。
発電停止中でも外部電源から起動できる
エネファームが発電を停止している状態で停電が起こってしまうと、そのままでは発電できません。しかし、外部電源で最初の発電に使うエネルギーを供給することで、エネファームを再起動して発電できます。外部電源とは、蓄電池や発電機、車のバッテリーなどです。外部電源は、AC100ボルトコンセント付きのものを用意しておきましょう。ただし、外部電源で起動できるエネファームの機種は限られているので、事前の対応確認が必要です。
すべてのエネファームで電気が使用できるわけではない
「外部電源も準備したし、エネファームがあれば停電しても安心」というわけではありません。実は、エネファームは機種によって停電時に使えないタイプもあります。停電時でも電気を供給したい場合は「停電時発電継続機能付きエネファーム」を選びましょう。この機能は2015年以降の発売モデルには搭載されています。すでにエネファームを設置している場合は、リモコン画面や型番から機能を確認できます。
停電時にエネファームを使用する際の注意点
エネファームを停電時に使用するにあたって、注意すべきことを5つご紹介します。実際に停電が起こる前に、十分理解しておきましょう。
停電が予測される際は発電状態にしておく
エネファームは発電停止状態で停電になると、外部電源がない限り稼働しません。停電が予測される際は、エネファームを発電状態にしておきましょう。効率よくエネルギーを使用するために、エネファームの稼働時間は通常自動で制御されています。稼働時間の目安は、夏が約10時間、冬が約16時間です。また、ガスメーターの安全機能を確認するため、26日連続して稼働したあとに24時間程度運転を停止する仕組みとなっています。
発電停止と停電が重ならないよう、台風の接近などで停電するおそれがある場合は、あらかじめ手動でエネファームの稼働時間を設定しておきましょう。計画停電を含め、停電のリスクが考えられる際に発電停止日を自動で制御できるサービスもあります。
停電時は専用コンセントから供給される
停電時にエネファームからの電気を使用する際は、家電製品のコンセントを「停電時専用コンセント」に差し込んで使用します。普段使っているコンセントから電気は供給されません。また、停電時専用コンセントは、停電時のみ使用できる仕組みとなっています。通常時には使えないので、状況に合わせて適切に使い分けてください。停電時にも使用したい家電製品は、停電用コンセントのそばに設置するなど日頃から備えておきましょう。
使用できる電力に限りがある
条件を満たしていれば停電時でも電力を供給できるエネファームですが、実は使用できる電力には限りがあります。使用可能な電力の目安は、おおむね500〜700Wです。具体的に同時使用できる家電機器は、テレビ・冷蔵庫・電気スタンド・パソコン・携帯充電器・お風呂・扇風機もしくは床暖房となります。[注]ただし、使用する機器の消費電力によって変わってくるので注意してください。エネファームからの電力で使用できる家電製品は、冷蔵庫やスタンド照明、ノートパソコンやスマートフォンの充電などです。エアコンやドライヤーなど、電力量の大きい家電製品には使えません。あくまで、非常時における必要最低限の電気として認識しておきましょう。
[注]大阪ガス
タンクのお湯を排出する必要がある
エネファームを連続稼働する場合は、定期的にお湯を排出する必要があります。タンクのお湯がいっぱいになると、自動的に発電を停止してしまうので停電時には注意しましょう。一旦発電が停止してしまうと、外部電源がなければ起動できなくなってしまいます。停電時にエネファームを利用する際は、貯湯タンクのお湯を浴槽に入れるなどして定期的に排出しましょう。最新機種では自動的に排水できるタイプもあります。
ガスが停止するとそもそも使えない
エネファームは発電ができる給湯設備ですが、発電に使用するガスが停止してしまうと当然電気は使えなくなります。風水害の発生によって停電しても、ガスは滅多に停止しません。ガスが停止するケースとして考えられるのは、ガス管そのものが破損した場合と、ガスの安全装置が作動した場合です。ガスの安全装置は、ガス漏れや震度5以上の地震を検知した場合に作動します。ただし、ガス漏れがなく安全を確認できれば、復旧ボタンを押すだけでガスの供給を自分で再開することが可能です。
条件さえ整えばエネファームは停電時の備えになる
環境性や経済性だけではなく、高い防災機能も備えたエネファームは、条件さえ整えば停電時の大きな備えとなります。エネファームによる停電時の発電は、使用状況にもよりますが10日間程度連続して使用できます。ただし、機種によっては停電時の発電に対応していません。停電時発電継続機能付きエネファームであることを確認しておきましょう。
計画停電や台風の進路など、停電を事前に予測できるケースも数多くあります。停電するおそれがあるときは、エネファームで発電できるように設定変更をするなど事前に備えておくことが重要です。
※「エネファーム」は東京ガス株式会社、大阪ガス株式会社、ENEOS株式会社の登録商標です