固定資産税とは土地や建物の所有者への財産税 計算方法や書類の見方を解説
固定資産税とは土地や建物の所有者への財産税 計算方法や書類の見方を解説
「不動産を所有すると固定資産税がかかる」と聞いたことがあっても、詳しいことはわからない方は多いのではないでしょうか。固定資産税の知識がなければ、所有している不動産の管理や売却の際には、適切な価値判断や税金処理ができません。
 
この記事では、固定資産税の計算方法、軽減税率などをわかりやすく解説します。固定資産税の知識を深め、現時点での所有不動産の価値を自分で計算できるようにするために、ぜひ参考にしてください。

固定資産税とは?納税期限も解説

固定資産税とは?納税期限も解説
固定資産税は不動産の所有者が毎年負担する税金ですが、細かな内容や支払い手続きについて疑問を持っている方がいるのではないでしょうか。ここでは固定資産税の基本的な疑問を解消すべく、税金の内容や納税期限をわかりやすく解説します。

固定資産税とは

固定資産税とは、土地や建物などの所有者に課される財産税です。固定資産がある地域の市町村が徴収し、地域の発展や住民サービス向上に役立てられます。
 
市町村には固定資産税の課税台帳があり、所有者や評価額・課税標準額が記載されています。固定資産の評価額は、適正な価値を算出するために国が定めた固定資産税評価基準に基づくものです。土地や建物は、3年ごとに評価を見直す「評価替え」を行います。
 
徴収された固定資産税は、地域の道路や学校、公共施設の整備や福祉などの行政サービスに活用され、、地域社会の発展に直接貢献する重要な財源です。

支払い月と納税期限

固定資産税は年間4回に分割して納税することが一般的です。東京都の場合、6月・9月・12月・2月が支払い月で、月末が納税期限です。支払い月と納税期限は自治体によって異なるため、所在地の自治体に直接聞くか納税通知書を確認しましょう。
納税期日を20日過ぎると督促状が発送され、納税が遅れた日数に応じて延滞金が発生します。さらに長期間滞納すると、差し押さえなどの滞納処分を受けることがあります。
固定資産税の支払い月と納税期限が記載された「納税通知書」の発送は毎年4~6月です。期限内に納税が難しい場合は、市町村の税務担当部署で分納や徴収猶予の相談が可能です。

固定資産税の計算方法

固定資産税の計算方法
固定資産税の計算方法を知ることで、所有している不動産の評価額を把握できます。評価額が分かれば、今後の不動産の運用計画や売却時に役立つでしょう。ここでは、固定資産税がどのように計算されるか、事例をまじえて解説します。

基本的な計算方法

固定資産税は、以下の式で計算できます。
 
『固定資産税=課税標準額(固定資産の評価額)×税率』
 
固定資産税の評価額は、国が定めた固定資産評価基準に基づいて計算されます。たとえば一定の条件を満たす住宅地区の補正値として、売買価格に0.9を掛けて評価します。また、特例があれば評価額に適用し、課税標準額となる金額を計算します。評価基準や特例により、必ずしも『不動産の購入価格=課税標準額』とはなりません。
 
固定資産税の税率は原則1.4%で計算します。ただし市町村によっては、条例で異なる税率を定めることがあります。固定資産税の計算方法を理解することで、所有する不動産を一定の基準で評価した価格を把握できます。

路線価に基づく計算事例

土地の固定資産税評価額の計算では、主に路線価が採用されます。路線価を基にした計算方法は、以下の計算式で求められることが一般的です。
 
『固定資産税評価額=路線価×補正率×土地面積』
 
たとえば「路線価が300,000円/㎡」「補正率が0.9」「土地面積が200㎡」の場合、その土地の評価額は5,400万円です。
 
路線価は、全国地価マップで確認できます。固定資産税路線価等を選択し、地図から目的の土地の路線価を調べられます。表示される数字の単価は円/㎡です。
 
路線価の記載がない地域は、標準宅地価格から計算します。標準宅地価格は状況類似地域(地区)ごとの標準的な宅地として選定された1㎡あたりの価格で、全国地価マップ上の赤丸で表示されています。

固定資産評価証明書と課税明細書の見方

固定資産評価証明書と課税明細書の見方
固定資産評価証明書と課税明細書はどちらも所有している不動産の情報を確認でき、以下の共通点と相違点があります。

固定資産評価証明書と課税明細書はどちらも所有している不動産の情報を確認でき、以下の共通点と相違点があります。 

固定資産評価証明書と課税明細書は、その年の1月1日に所有していた不動産の評価内容が記載されています。たとえば、令和6年の内容として取得できる証明書や明細書は、令和6年1月1日時点での情報です。互いに内容は似ていますが、固定資産評価証明書には非課税の不動産も含めて記載されています。

固定資産評価証明書の見方

固定資産評価証明書は、市町村にある固定資産課税台帳の登録内容を証明する書類です。不動産が所在する市町村役場から有料で取得可能であり、不動産の詳細な情報や評価額が記載されています。
 
固定資産評価証明書は、市町村にある固定資産課税台帳の登録内容を証明する書類です。不動産が所在する市町村役場から有料で取得可能であり、不動産の詳細な情報や評価額が記載されています。
[注1]東京都主税局ホームページより引用(https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shisan/syoumei.html)
 
固定資産評価証明書には、以下の情報が記載されています。
 
●     所有者
●     不動産の所在
●     不動産の種類
●     土地の面積や建物の床面積
●     評価額
●     課税標準額
 
固定資産評価証明書は各種申請や届出に添付書類として使用され、たとえば相続登記の際に法務局に提出する書類として必要です。

課税明細書の見方

課税明細書は、固定資産税に関する重要な情報が記載された書類であり、固定資産税納付書に同封される書類です。
 
課税明細書は、固定資産税に関する重要な情報が記載された書類であり、固定資産税納付書に同封される書類です。
[注2]東京都主税局ホームページより引用(https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shitsumon/tozei/meisai_mihon.pdf)
 
この書類は固定資産評価証明書と同様の内容に加えて、特例の適用や負担水準が記載されています。不動産ごとの評価額から負担水準により課税標準額を求めることで納付する税相当額がわかります。
 
固定資産税の計算式『固定資産税=課税標準額(固定資産の評価額)×税率』を使って、上記画像の土地の税相当額を計算すると、以下のようになります。
 
土地の価格:45,000,000円
本則課税標準額:7,500,000円(45,000,000円×小規模住宅用地1/6)
負担水準:90%(前年度課税標準額6,750,000円÷今年度価格7,500,000円×100)
課税標準額:7,125,000円(今年度価格7,500,000円×(負担水準90%+負担調整措置5%))
税相当額:99,750円(課税標準額7,125,000円×税率1.4%)
 
1筆の土地を異なった用途で使用している場合、課税明細書では複数行で記載されることがあります。たとえば、畑の一部を駐車場として使用している場合、現況地目でそれぞれ評価されるため、同じ地番でも畑部分と駐車場部分の2行で記載されます。
 
課税明細書には課税対象の不動産のみが表示されるので、地目が公衆用道路などの非課税の不動産情報まで確認したい場合は、固定資産評価証明書を取得しましょう。

固定資産税の特例措置と軽減税率

固定資産税の特例措置と軽減税率
固定資産税には、不動産所有者の負担を軽減するためのさまざまな特例措置が設けられています。この特例を知ることで、所有する不動産に適用可能な税金の軽減策がわかり、固定資産税に適用されているかを自分で判断できます。それぞれの特例措置によるどの軽減策が適用できるのかを詳しく見ていきましょう。

住宅用地は1/3または1/6の特例措置

住宅用地の固定資産税は、特例措置により軽減されます。小規模住宅用地(200㎡以下)では評価額の1/6、一般住宅用地(200㎡超)では1/3の軽減率です。この特例措置は、住宅所有者の税負担を軽減し、住宅の所有を支援するために設けられています。
 
この制度の背景には、住宅所有に伴う経済的負担を減らし、より多くの人々が安心して住宅を持てるようにするという政策的な意図があります。小規模住宅用地と一般住宅用地の区分けによって土地の規模に応じた軽減措置が施され、住宅所有者の税負担が公平になるよう配慮された特例措置です。

長期優良住宅の特例措置

長期優良住宅に対する特例措置は、新築住宅の固定資産税負担を軽減する政策の一環として設けられています。戸建ての一般住宅では通常3年間の軽減期間が設けられており、長期優良住宅の場合は適用期間が5年間です。
 
マンションの場合、一般住宅が5年間の軽減期間であるのに対し、長期優良住宅では7年間の軽減期間が設定されています。特例措置の軽減率は2分の1です。
 
長期優良住宅の特例措置
 
この特例措置を適用するには、対象家屋の床面積が50㎡以上280㎡以下でなくてはいけません。長期優良住宅は一定の基準を満たした耐久性や省エネルギー性能を持つ住宅であり、基準を満たすことで特例措置の対象です。

建物改修で適用できる軽減措置

建物の改修を行った場合、特定の条件下で固定資産税の軽減措置が適用されることがあります。たとえば、以下の改修工事が制度の対象です。
※以下の要件に加えてその他の適用要件もありますので、詳しくは東京都主税局ホームページをご確認ください。
●     省エネ改修
●     バリアフリー改修
●     耐震改修
 
省エネ改修に関する特例措置は、住宅のエネルギー効率を向上させるために行われ、窓の改修(必須)や断熱材の追加などの工事が対象です。この工事を行うことで、翌年度の固定資産税額から3分の1(1戸あたり120㎡相当分まで)が減額されます。
 
バリアフリー改修に関する特例措置は、高齢者や障害を持つ人々が安全かつ快適に生活できるように、住宅内の段差の解消や手すりの設置などを行う工事です。築10年以上を経過した住宅が対象となり、省エネ改修と同様に翌年度の固定資産税額から3分の1(1戸あたり100㎡相当分まで)が減額されます。
 
耐震改修に関する特例措置は、地震による建物の損傷リスクを減らすために建物の構造を強化する工事です。昭和57年1月1日以前に建築された住宅を現行の耐震基準に適合する工事が対象となり、翌年度の固定資産税額から2分の1(1戸あたり120㎡相当分まで)が減額されます。

固定資産税に関するよくある疑問

固定資産税に関するよくある疑問
不動産を所有していると、固定資産税についてさまざまな疑問がでてきます。
 
●     固定資産税評価額から売却相場は調べられるのか?
●     不動産売買時における固定資産税の精算方法は?
●     相続があった場合の固定資産税は誰が負担するのか?
●     遺言書で固定資産税の負担割合を指定できるか?
 
ここでは、上記の疑問について具体的に解説します。

固定資産税評価額から売却相場は調べられるのか?

固定資産税評価額は、土地や建物の売却相場を知る1つの手がかりです。土地の売却の公示価格は、固定資産の評価額を0.7で割った金額が目安とされます。公示価格の約1.1倍が実勢価格と言われています。
 
公示価格とは、路線価などの公示によって計算された土地の価格です。一方で実勢価格は、実際に取引された価格です。固定資産税評価額で4,200万円の土地を例に計算してみましょう。
 
実勢価格=公示価格×1.1
    =(固定資産税評価額÷0.7)×1.1
    =(4,200万円÷0.7)×1.1
    =6,600万円
 
固定資産税評価額は、市町村が定める基準に従って不動産の価値を算定したものであり、不動産取引市場における実際の価格と完全に一致するわけではありません。一方で売却相場の目安としてであれば、固定資産税評価額を利用できます。

不動産売買における固定資産税の精算方法は?

不動産売買においては、引き渡し日を基準に固定資産税を日割り計算して買主が負担する形で精算されるのが一般的です。
 
固定資産税は1年間の所有権に基づいて計算されるため、日割り計算することで売主と買主間で公平に負担します。売主が引き渡し日の前日までの固定資産税を負担し、買主は引き渡し日以降を負担することになり、双方にとって公正な取引が可能です。
 
日割り計算をすることで不動産売買における固定資産税の負担が明確になり、後日のトラブルを防げます。

相続があった場合の固定資産税は誰が負担するのか?

相続があった場合、基本的には被相続人が亡くなった時点での固定資産税は、相続人が法定相続分の割合で負担します。たとえば、配偶者と子ども2人が相続人である場合、配偶者が2分の1、子どもがそれぞれ4分の1です。
 
税の負担割合は特に指定がなければ法定相続分で決まり、相続発生時には相続人が協力して財産管理と税金支払いを行います。相続人間での分割協議や遺言書による指定があれば、特定の相続人が負担できます。
 
このように相続があった場合の固定資産税の負担は、相続人が法定相続分に応じて分担することが基本です。

遺言書で固定資産税の負担割合を指定できるか?

遺言書による指定があれば、特定の相続人が固定資産税を負担する割合を定めることが可能です。遺言書を利用することで、財産の分配だけでなく税金の負担についても具体的な指示を残せるため、相続人間の紛争を未然に防げるでしょう。
 
遺言書で固定資産税の負担割合を指定することは有効な方法です。不動産の相続における負担をあらかじめ明確にし、相続人間の円滑な関係を保てます。

固定資産税は土地や家屋の所有者が納付しなければならない

固定資産税は土地や家屋の所有者が納付しなければならない
固定資産税は、土地や建物などの不動産を所有している人が納めるべき税金です。この税金は所有する不動産の価値に基づいて計算され、市町村が管理しています。
 
固定資産評価証明書や課税明細書では、所有している不動産の価格や税額が確認できます。路線価を調べることで、固定資産税の評価額を自分でも計算可能です。また固定資産税には、さまざまな特例措置や軽減制度があるので対象となるものがあるか調べてみましょう。
 
固定資産税の計算方法や関連する制度を理解することで、所有する不動産の価値を把握でき資産管理に役立ちます。また、適切に管理し納税義務を果たすことで、所在地の市町村の市民サービスにも貢献しています。不動産などの固定資産をお持ちの方は、期限内での納付を忘れないように、今一度納税通知書を確認してみてください。